半導体で終わらない!富士通の「ハード切り離し」 新光電工をJICに売却へ、残る再編の焦点は?

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ハードウェア製造からの段階的撤退により、メーカーの面影が年々薄まる富士通。現在の同社の収益を支えるのが、コンサルティングやクラウドサービスを通じて顧客のDXなどを支援するサービスソリューション分野だ。とくに同分野の新たな商材である「Fujitsu Uvance(フジツウユーバンス)」などの開発が、今後の富士通の成長を占う重要な要素となる。

フジツウユーバンスは、複数の顧客企業へ共通して提供するソリューションだ。富士通が長年手がけてきた、顧客企業ごとの細かな要望に応じる「ご用聞き型」のシステム構築とは一線を画している。

富士通にとっては、ご用聞き型と比べても、提供に際して手間や工数がかからないフジツウユーバンスの比重が高まれば、その分だけ利幅の改善が期待される。

ノンコア事業以外でも再編が進むか

富士通は2026年3月期に調整後営業利益率を12%と、2023年3月期実績(9%)から3ポイント改善させる目標を掲げている。これは同期間で、フジツウユーバンスの売上高を3.5倍の7000億円(全社売上高は4.2兆円の予想)に急拡大させることを前提とした数値だ。

富士通は2026年3月期までの3年間に、成長投資と株主還元で合計1兆3000億円(前の3年間の2倍)を投じる計画だ。成長投資の振り向け先はサービスソリューション分野であることを明言しており、このためにもノンコアの事業を手放し、投資の原資を確保することが急務だと言える。

今後の焦点は、FDK、富士通ゼネラルの売却に加え、明確にノンコアと位置付けていない事業でも整理が加速するかどうかだ。2023年11月には、フジツウユーバンスなどを中核としたビジネスモデルへと移行するため、ドイツ事業の一部譲渡を発表している。収益性改善に向けて、再編がさらに進む可能性は大きいだろう。

構造改革のスピードを一段と高めて、DX企業へと脱皮を遂げられるか。経営陣の手綱さばきが試される。

高野 馨太 東洋経済 記者

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たかの けいた / Keita Takano

東京都羽村市生まれ。早稲田大学法学部卒。在学中に中国・上海の復旦大学に留学。日本経済新聞社を経て2021年に東洋経済新報社入社。担当業界は通信、ITなど。中国、農業、食品分野に関心。趣味は魚釣りと飲み歩き。

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