パワー半導体でもニッチを攻めるミネベアミツミ 手綱を取るのは事業売却方針を一転させた人物
もともと、日立パワーデバイスはミネベアミツミと深い縁があった。ミツミ電機の流れをくむ千歳事業所は、矢野氏が最初に所属した日立子会社から歴史が始まっている。言うならば、両者は親戚同士のようなものだ。昔から人的交流も活発だったという。
こうした背景もあり、ミネベアミツミは日立側からパワー半導体の製造を受託していた。技術導入も受け、それを基に設計したチップを販売するビジネスを展開。一方、半導体デバイスとして完成させる後工程の能力は有していなかったため、最終製品のメーカーとの直接取引は難しかった。
そこに日立パワーデバイスのモジュール技術が加わり、パワー半導体においても、設計から後工程までをカバーする垂直統合型の体制が整う。
顧客が広がり先端技術も取り込める
矢野氏はその意義を「商売の相手がグッと広がる。さらに、ミネベアミツミが持つ電源やモーターなど、ほかの主力製品と掛け合わせて新たな価値を生み出せる可能性もある」と強調する。
日立側の先端技術を取り込めることも利点だ。「サイドゲート」と呼ばれる独自技術では、主に高電圧下で使われるIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)を3割ほど小型化できる。シリコンに代わる次世代の半導体材料、炭化ケイ素(SiC)の扱いにも長けている。
市場調査会社の富士経済によると、2035年にパワー半導体の世界市場は約13兆円に達し、2022年と比べて約5倍に。EVが牽引役として期待される中で、ミネベアミツミが狙うのは、やはりニッチ分野だ。貝沼氏は先の決算説明会でこう語った。
「ターゲットのいちばんは(鉄道などの)輸送機器、(太陽光発電などの)パワーグリッド。自動車が『ど真ん中』というわけではない。われわれは、大きな市場に大量供給していくことを考えていない」
日立パワーデバイスとの具体的な統合の日程は未定。その進捗に注目が集まっている。新たな挑戦が、どんな湖での大魚に育つのだろうか。
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