パワー半導体でもニッチを攻めるミネベアミツミ 手綱を取るのは事業売却方針を一転させた人物

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「ものすごい額の投資をしなくても、知恵と匠の技があれば生き残れる。製造する過程も面白い。部品同士が調和し、ピタッとハマって優れた物を作れた時は、本当に気持ちいい」(矢野氏)

そんな魅力に取り憑かれた男の言葉が、貝沼氏の心を動かした。貝沼氏は「アナログ半導体事業は売却候補だったが、旧ミツミ電機から素晴らしいプレゼンがあり、逆にしっかり取り組もうとなった」と振り返っている。

アナログ半導体でも買収を駆使

事業の継続が決まり、最初に設定された目標は売上高500億円。当時の規模から倍以上の数字だ。矢野氏はまず、得意のニッチ分野をさらに磨き上げる戦略をとった。2020年にアナログ半導体の国内メーカー、エイブリックを買収したのだ。

狙いの一つは、スマートフォンなどで広く使われるリチウムイオン電池保護ICの強化だった。バッテリーの劣化を防ぐための部品で当時のシェアは、ミネベアミツミが約4割と世界1位、エイブリックは約3割で同2位。買収後は約8割の世界シェアを誇り、確固たる地位を築くことに成功した。

次なる目標は売上高1000億円。これを達成するためには生産能力の増大が不可欠と考えて2021年、滋賀県にあるオムロンのアナログ半導体工場を買収。2022年には千歳事業所を含めてパワー半導体の生産能力を3倍に増強した。

さらに貝沼氏は今年、半導体の生産能力を2~3年のうちに倍増するとメディアの取材に公言している。

まだまだ成長の歩みは止めない。2030年度の売上高3000億円と新たな目標を設定し、これまでと比べてもグッと高い山を登り始めた。今回の日立パワーデバイスの買収は、実現のための一手となる。

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