「東京がすごかった時代」と既に始まっている衰退 富裕層のための再開発に哀愁が漂う

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(写真:ponoponosan/PIXTA)
人生のほぼすべてを東京で過ごし、50歳を前にして佐賀県唐津市に移住した著述家の中川淳一郎氏。本稿は同氏の著作『日本をダサくした「空気」 怒りと希望の日本人論』より一部抜粋・再構成のうえ、かつて輝いていた東京を振り返りつつ、憂うべき未来について展望します。

当時の東京を示す現象

いったん地方に住んでみると、東京のすごさはよくわかる。何しろ、中央官庁はすべて揃い、かつて世界で絶大なる存在感を示した名だたる企業の本社が多数存在するのだ。

一時期世界で圧倒的存在感を示した「経済」の面において、東京は1980年代前半~1990年代前半はニューヨークと並ぶ世界一の都市だったと言っていいだろう。

1983年に「ビッグコミックスピリッツ」で連載が開始した漫画『美お
味いしんぼ』の初期のストーリーを読むと、当時の東京の雰囲気が見えてくる。

世界の名だたるレストランがこぞって東京に店舗を作り、そこに金持ち日本人が多数訪れる。そこに集う自称・食通はフォアグラがウマいだの「ここにあるもので一番高いものもってこい!」と言う。挙句の果てには「経済大国日本様様ですね」などと言う。

マドンナやマイケル・ジャクソンが東京ドームでツアーをすれば、連日満席に。当時最強だったボクシングヘビー級のマイク・タイソンの防衛戦まで東京ドームで行われる。

東京に行けばカネが稼げる、ということでイラン人が大挙して東京に住むようになった。「3K」と呼ばれる「きつい・汚い・危険」な仕事をやるためだ。1990年代前半は偽造テレフォンカードを売る者が現れたりもしたが、それはバブル崩壊の影響もあったことだろう。

とにかく当時の東京は華やかで、大学生カップルがクリスマスにはフレンチやイタリアンの高級店で食事をし、そのままシティホテルに泊まり、アツい一夜を過ごすなんてこともやっていた。

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