キーエンスが劇的成果出す「チーム行動の数値化」 「一般的なマネジメントの数値化」と何が違う?

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しかし、キーエンスの場合は、顧客の規模別に原因を追究して、お客様から問い合わせがあったものとなかったものとでどのように成果の差があるのかなどまでがわかるようになっています。

つまり、キーエンスの数値化では行動と結果の因果関係を追跡できるほどにプロセスを分解しているわけです。

以上のことから、数値化しているけれども成果が出せていないという企業や組織には2つのタイプがあることがわかります。

一つはKGIを設定してはいるけれども、プロセス分解ができておらず、月次や週次、日次といったリアルタイムでの追跡ができていないタイプです。この場合は、いくらKGIを設定していても、行動が伴っていないプロセスを瞬時に捉えることができませんから、行動と結果の因果関係が明らかにできません。そのため、何を改善すればいいのかわからないままになってしまいます。

成果が出せていない企業や組織の課題

そしてもう一つは、プロセスを分解して数値化し、前月や前年同月などとの比較をしているにもかかわらず、数字の結果だけに一喜一憂しているタイプです。このタイプは、せっかく数字で結果を確認しているにもかかわらず、その因果関係や原因を深掘りできていません。

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そのため、目標を達成していないときにもマネジャーがメンバーたちに対して不満をぶちまけて終わりになっており、原因の追究がおざなりになっています。したがって、せっかく数値化しておきながらPDCAを回せていませんので、全く進歩がありません。

たとえば、売上が目標に到達していなかったのは「面談数が足りなかったからだ」まではたどり着いても、「だから面談数を増やせ!」といった根性論で終わっているのです。

この場合は、なぜ面談数が足りなくなったのか、その原因まで追究しなければなりません。それはアポの取り方が悪かったのか、そもそも架電数が不足していたのか。ターゲットのミスマッチだったのか、移動効率が悪かったのか。原因を深掘りしていけば、根性論に頼らずとも合理的に問題を改善できるはずです。

このように、数値化を行っているにもかかわらず成果が出せていない企業や組織は、数値化によって課題をあぶり出して改善するという肝心の行為が伴っていません。

岩田 圭弘 アスエネ株式会社 共同創業者 兼 取締役COO

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いわた よしひろ / Yoshihiro Iwata

慶應義塾大学経済学部卒業後、2009年にキーエンスに新卒入社。マイクロスコープ事業部の営業を担当。2010年新人ランキング1位を獲得。その後、2012年下期から3期連続で全社営業ランキング1位を獲得し、マネージャーに就任。その後本社販売促進グループへ異動、営業戦略立案・販売促進業務を担当。2015年、三菱UFJリサーチ&コンサルティングに転職。小売、医薬、建設業界の戦略策定、新規事業戦略策定に従事。2016年にキーエンスに戻り新規事業の立上げに携わる。2020年アスエネに参画。

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