「人のせいにする子ども」大量に生んだ日本の教育 工藤勇一×西岡壱誠「教育の役割」対談【前編】
工藤:今に始まったことではありませんが、最近、幼児のうちから英語の早期教育、音楽の情操教育などに力を入れている親がよくみられます。「三つ子の魂百まで」と言われるように、脳科学的に見ても幼児における教育環境はとても大切ですが、子どもが与えられたすべての環境に対して良い反応をするとは限りません。中には反発する子どもだっています。
子どもが望まない環境を与え続けていけば、脳科学的にみれば、子どもの成長には悪影響です。そして、子どもの行動を強制的にコントロールし続けていくと、結果として依存心の強い子どもに育ちやすくなります。
そうした子どもたちは、何かうまくいかないことがあると他人や環境のせいにするようになりますし、成長とともに親に反発するようになります。また、その一方でやはり依存から逃れられないようになってしまいます。
西岡:親から言われてやったことがうまくいかなければ、親のせいだと考えるのはきわめて自然ですね。
工藤:子育ては幼児教育のスタートから、主体性を失わせないようにしながら、自律を伸ばしていくという教育を継続して行うことが大切です。でも、従来の日本の教育を受け続けた子どもたちの中には、すでに主体性を失い、傷ついている子が大勢います。
こんな家庭はザラにあるんじゃないでしょうか。朝、子どもがなかなか起きないので、親は心配になる。そこで、おせっかいに起こしに行くんですね。
言わば、親が良かれと思って子どもに与えている「サービス」です。ところが、残念なことに子どもはこのサービスに慣れていくんですね。そして、そのうち「うるせえよ」と言い出します。「宿題はもうやったの?」と聞けば「うるせえよ」なんて返ってくるのも、同じようなことですね。
自己決定を失い、他責思考になる子どもたち
工藤:サービスに慣れた子どもたちは、結局のところ自己決定する習慣がないので、依存的で他人の文句ばかり言うようになります。
今の日本の教育の最大の問題は、親だけじゃなく、学校も塾もすべてがサービス産業化してしまったことです。
子どもたちは「自分が勉強できないのは先生のせい」「教え方が悪い」と当たり前のように言い放ちます。
いつの間にか自分が当事者であることを忘れ、単にサービスを与えてもらう消費者になってしまっているわけです。
西岡:他責思考の蔓延ですね。日本の子どもたちは「自分が社会問題を解決できると思うか、解決したいと思うか」といった意欲が、他国と比べて低いという意識調査がありますが、象徴的ですね。