決断の時「選択肢は多い方がいい」と思う人の盲点 与えすぎることの弊害を解説、では最適な数は?

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実は心理学者のジョージ・ミラーが画期的な研究によって、すでに適切な数を明らかにしている。

ミラーによれば、人間は選択をする際に、およそ7個――プラスマイナス2個――(ミラーはこれをマジックナンバーと呼んだ)の項目を脳に入れておくことができる。

だがこの数を超えると、認知的過負荷の状態に陥り、混乱してまずい選択をしてしまうか、ジャムの実験のように、まったく選択ができなくなってしまうという。

選択に制約を設けることの価値

発明家や芸術家、音楽家などの、きわめて創造性が高いとみなされる人々も、選択に制約を設けることの価値に昔から気づいている。

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彼らは形式や構造の中で作品を生み出し、そうした枠を破っては、また新たな境界を設ける。

もし選択が芸術や音楽のように、創造性の産物だというのなら、この創造性の規律が指針になるはずだ。

偉大なジャズミュージシャンのウィントン・マルサリスも、私にこう話してくれた。

「ジャズには何らかの制約が必要なんだ。制約なしの即興演奏は誰だってできるが、それはジャズじゃない。ジャズには何らかの制約が必ずある。そうでなければただの騒音になってしまう」

あらゆる音楽形式の中で「最も自由」なジャズにさえ、制約があるのだ!

(翻訳:櫻井祐子)

シーナ・アイエンガー コロンビア大学ビジネススクール教授

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Sheena Iyengar

心理学者。1969年、インド移民の両親のもとカナダで生まれる。3歳で眼の疾患を診断され、10代後半で完全に視力を失う。にもかかわらず普通学校に進学することを選択し、大学進学後は「選択」を研究テーマとする。スタンフォード大学より博士号取得(社会心理学)。経営思想界のノーベル賞と称されるランキング「Thinkers50」に3度にわたり選出。米大統領より卓越した若手研究者に贈られるPresidential Early Career Awardも3度受賞。現在はコロンビア大学ビジネススクールで人気講義THINK BIGGERを開講中。

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