「最高のゴジラ」アメリカも認めた歴史的作品に 来年4月北米公開のハリウッド版にプレッシャー

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しかし、少数派ながらネガティブな感想もある。ウェブサイト「Movie Nation」のロジャー・ムーアは、ヒューズやポーランドが褒める脚本を「感情面で弱い」と感じ、「人間のストーリーを語ろうと試みはするが、単なるゴジラ映画の中では気を散らせるだけだ」「山崎氏がやろうとしていることは良いと思うが、自国の観客に臆病な形でテーマを語ろうとしたことから、モンスター映画に制限がかかってしまった」と書いている。

『ニューヨーク・タイムズ』はまあまあという感じの短い批評にとどまった。『ロサンゼルス・タイムズ』は、この映画の批評を掲載していない。

アメリカのゴジラファンも認めた

さて、観客の感想はどうかというと、圧倒的に5つ星満点の5つ星が占める。ここまでの状況はそうそう見るものではない。今の段階で劇場に駆けつけた観客がゴジラの大ファンであることは言うまでもないだけに、この結果はより大きな意味を持つ。

ファンの書き込みには「過去最高のゴジラ映画」「ストーリーもキャラクターの変化もすばらしい。感情的な映画だ」「ゴジラ映画の中で最高というだけでなく、近年の映画の中で最も優れたもののひとつ」「東宝のゴジラは2016年以来だが、待った甲斐があった」などというものが見られる。この記事を執筆している段階ではけなすコメントはひとつも見つからなかった。満点の5つ星を与えなかった人たちも、4つ星半をあげている。

この映画がここまで愛されたとあれば、次に来る『Godzilla X Kong: The New Empire』には、さらにプレッシャーがかかるのではないか。来年4月の北米公開が予定されているこのハリウッド映画は、2021年の『ゴジラvsコング』の続編。監督は前回同様、アダム・ウィンガードだ。

『ゴジラvsコング』はパンデミック中の公開だったこともあり、2億ドルの予算に対して、世界興収は終始とんとんレベルの4億7000万ドルだった。満足度はというと、Rottentomatoes.comでの数字は批評家が76%、観客が91%と決して悪くない。だが、『ゴジラ-1.0』のせいで、ファンのハードルは上がってしまった。

撮影は今年前半に終了しているし、もうどうしようもないが、「史上最高」の後には何が来るのか。いずれにせよ、70年続いてきたゴジラのレガシーは、これからもとどまることはなさそうだ。

ゴジラ-1.0 	山崎貴 	 神木隆之介 
ロサンゼルスのプレミアで撮影に応じる山崎貴監督(左)と神木隆之介さん(写真:REX/アフロ)
猿渡 由紀 L.A.在住映画ジャーナリスト

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さるわたり ゆき / Yuki Saruwatari

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒業。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場リポート記事、ハリウッド事情のコラムを、『シュプール』『ハーパース バザー日本版』『バイラ』『週刊SPA!』『Movie ぴあ』『キネマ旬報』のほか、雑誌や新聞、Yahoo、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。

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