「走るオフィス」に変貌した、のぞみ号の車内空間 ビジネス席に会議用ブース、EXサービスも進化

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最大効率を追求したいJR東海の大きな武器は、会員・登録者数が1000万人超に膨らんだ「EXサービス」だ。

2001年にインターネット予約サービス「エクスプレス予約」としてスタート。2008年には専用ICカードによる「EX-ICサービス」も開始し、SuicaやPASMOなどと同じように、改札機にタッチするだけで新幹線に乗れるようにした。

ネット上のシートマップで空席を確認して事前に希望の座席を買えるうえ、年会費1100円を払えば、発券前なら何度でも手数料なく変更できる。たまったポイントでグリーン車へのアップグレードも可能で、出張族のビジネスパーソンに支持されていった。2017年には、年会費不要で既存の交通系ICカードも使えるようになり、現在ではネット予約の比率は半数を超えている。

メリットは顧客だけでなく、鉄道会社の側にもある。切符の発券が減るのに合わせ、駅構内の人流は「みどりの窓口」から券売機へ、さらにモバイルへと移動。空いたスペースを店舗など別な用途へ置き換えられた。首都圏で切符などの販売拠点が少ないJR東海にとっては、ネット販売=直販の比率が上がったことで、JR東日本に支払う手数料が大きく減った。

IT化には顧客も伴走する必要あり

チケットレスは“別な効能”も生んでいる。かつて金券ショップで売られていた東京─新大阪間など新幹線の指定席回数券は2022年3月末に廃止。転売ヤーたちもこのジャンルには手を出しにくくなった。

あるJR東海の幹部は打ち明ける。「(ITによる一連の効率化は)顧客がどれくらいそのサービスについてこられるかにかかっている」。3分に1本発車する列車に迷わず乗れるのも、発車4分前まで乗車する列車をスマホで変えられるのも、個々の乗客がEXサービスに習熟し、行動できていることが何より大きい。

10月の東海道新幹線の輸送量は、土日休日がコロナ禍前比で99%の水準まで戻ったのに対し、平日は94%にとどまっている。平日のビジネス需要のほうが伸びしろは大きい。のぞみは今日も休まず、絶え間なく効率を追求し続ける。

大野 和幸 東洋経済 記者

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おおの かずゆき / Kazuyuki Ohno

ITや金融、自動車、エネルギーなどの業界を担当し、関連記事を執筆。資産運用や相続、年金、介護など高齢化社会に関するテーマでも、広く編集を手掛ける。大野和幸(X)

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