ド文系でも腹落ち「微分」を成り立ちから理解する ズボラな発想から緻密な予測をする数学が生まれた

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例えば、砲弾が時速100キロで飛んでいるとすると、それは1秒で約28メートル進むことを意味します。28メートルというと、バスケットボールのコートの縦の長さと同じなので、けっこうな距離です。砲弾が28メートルも進んでいる間には、その進行方向もそれなりに変わってしまうでしょう。

では、その100分の1の時間、すなわち0.01秒ではどうでしょうか? 0.01秒で進む距離は約28センチです。これだと、千円札を横に2枚並べたくらいの長さなので、砲弾はほんの少ししか進んでいないことになります。なので、砲弾の飛ぶ方向もほぼ変わらないでしょう。

「グラフの接線を求める計算」だと教わる理由

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つまり、砲弾は放物線に沿って動いているのですが、ほんの短い時間を切り取れば、砲弾はほぼ直線的に進んでいると考えてよいのです。より具体的に言うと、接線の方向に進んでいると考えることができます。

つまり、砲弾が敵に当たる瞬間も含め、ある瞬間における砲弾の進行方向を知ることは、軌道の曲線の接線を求めるという数学の問題に置き換えられるのです。

このように、微分とは、“その瞬間の変化を考えること”です。それは、グラフでいえば「接線を求めること」を意味します。こうした背景があるので、高校では「微分とはグラフの接線を求める計算のこと」だと教えているわけです。

冨島 佑允 クオンツ、データサイエンティスト

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とみしま・ゆうすけ / Yusuke Tomishima

クオンツ、データサイエンティスト。1982年、福岡県生まれ。京都大学理学部卒業、東京大学大学院理学系研究科修了(素粒子物理学専攻)。大学院時代は欧州原子核研究機構(CERN)で世界最大の素粒子実験プロジェクトに参加。修了後はメガバンクにクオンツ(金融に関する数理分析の専門職)として勤務し、ニューヨークのヘッジファンドを経て、2016年より保険会社の運用部門に勤務。2023年より多摩大学大学院客員教授。著書に『数学独習法』(講談社現代新書)、『世界を変えたすごい数式』(朝日新聞出版)などがある。

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