米国株の急反発はいったん終わりを迎えそうだ 早期の利下げを期待する今の市場は先走りすぎ

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混乱はいったん収まり、債券市場の市場心理は11月に大きく変わった。筆者を含めた多くのエコノミストは7月会合が最後の利上げと想定していたが、11月になってようやく、債券市場ではこの見方がコンセンサスとなり、FRBによる追加利上げ期待は、ほぼ消失した。

以上が、最近のアメリカ株価反発の経緯である。それでは、このまま株式市場の反発は続くのだろうか。筆者は、短期的にはやや懐疑的である。というのも、FRBの政策対応に対する悲観心理が、早くも楽観方向に傾きつつあるからである。市場では「早ければ2024年3月にもFRBが利下げに転じる」との期待が、早々に織り込まれつつある。

早期の利下げを期待する今の市場は「先走りすき」

確かに、追加利上げの可能性が、かなり低くなったのは理解できる。ただ、2024年春にも早ければ利下げを期待している今の金融市場の認識は、先走りすぎではないか。実際に、FRBが早期利下げを検討し始めるのは、インフレの趨勢が2%台に落ち着くとの認識が強まる状況になってからだと思われる。この時期は、早くて2024年の秋口ではないかと筆者は予想している。

市場のFRBに対する思惑が、楽観方向に傾きすぎているとすれば、年末にむけて一段高を期待させる株式市場についても、早晩息切れしてもおかしくない。年初からのS&P500種指数のリターンは約19%(11月24日時点)だが、企業の業績予想(1年先の利益)の改善は緩やかにとどまっており、株式市場は既に将来の業績改善のかなりの部分を織り込みつつあるようにみえる。

2024年は、FRBの高金利維持政策が、利下げ方向にいつ、どのように転換するかが、米国株を左右するだろう(さらなる利上げが行われるシナリオもありうるが、可能性は低い)。筆者が想定するシナリオは、経済は失速せずに緩慢な成長となり、インフレもゆっくりと落ち着く、いわゆるソフトランディングである。この場合、FRBが高金利政策を緩めるには時間がかかるだろう。

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