米国株の急反発はいったん終わりを迎えそうだ 早期の利下げを期待する今の市場は先走りすぎ

拡大
縮小

もう一つ想定されるのは、これまでの高金利でアメリカ経済が2024年前半に急失速(景気後退)して、FRBが早期に利下げを迫られるシナリオである。この場合は、市場が想定し始めたように、2024年春先の利下げ開始が現実味を帯びてくる。

筆者は、2024年のアメリカ経済について、前者のシナリオを想定している。これまでの利上げが今後経済成長を抑制する可能性が高いが、銀行貸し出しの大幅削減を伴うなど深刻な引き締め効果が、2024年になって強まらない、と考えている。このシナリオなら企業業績の改善が途切れないとみられ、株式市場にとって決して悪くない。

インフレは2024年内に2%台へ

ただ2024年利下げはインフレ率の落ち着きを見定めた後になるので、先に述べたように、市場で期待されつつある早期利下げは、簡単に実現しないとみられる。政策金利が高止まりする懸念から、長期金利が再び5%付近まで上昇するなど、債券市場の不安定な値動きが再来してもおかしくないのではないか。

であれば、2023年8月以降と同様に、2024年前半までは長期金利などの高止まりが、株式市場の割高感を再び高めることで、アメリカ株式市場の上値を抑えることになる。金利上昇への懸念がくすぶる中で、一本調子の上昇は難しいのではないか。

もっとも、短期的には株式市場に対してやや慎重だが、アメリカのインフレ率が再加速せずに、時間はかかるにしても、2024年には2%台のインフレへ落ち着く、と筆者は考えている。

経済・インフレがソフトランディングすれば、2024年も企業業績の改善は途切れないだろう。金利上昇がもたらす短期的な調整局面に冷静に対処できるかどうかが、2024年の米国株投資のパフォーマンスを左右することになりそうである。

(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません。当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

村上 尚己 エコノミスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

むらかみ なおき / Naoki Murakami

アセットマネジメントOne株式会社 シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、外資証券、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT