先に述べたとおり、ぜん息は子どもの病気とは限らない。大人になると、ぜん息発作やその不安のため、仕事や家事などが手に付かずさまざまな支障が出てくることが、權医師らの興味深い研究で明らかになっている。
「2018年に約800人の成人ぜん息患者を対象に質問票を用いて調査したところ、患者さんの3人に1人は症状をコントロールできていませんでした。コントロール不良な人は生活の質が低下していたばかりか、労働生産性も低下していました。他の研究者からも同様のデータが出ています」(權医師)
症状をコントロールすることが大事
労働生産性の低下には、大きく2つのパターンがある。
1つは、欠勤(アブセンティーズム)。症状のため、あるいは通院や入院のために仕事を休むような状態。もう1つは、勤務に就いているにもかかわらず仕事がはかどらない状態。プレゼンティーズムと呼ばれる。
上の図を見るとわかるが、權医師らの研究では、ぜん息の症状をコントロールできていない人は、良好な人と比べてプレゼンティーズムや総労働損失の割合が明らかに高かった。
つまり、治療がうまくいっていないと、労働損失がより大きいと考えられる。權医師は、「想像ですが」と前置きしつつ、「発作時に使う薬を頻繁に使っている患者さんは、仕事がはかどらないのではないか。症状が治まっているときも、いつ発作が表れるか不安で、集中力が落ちていると思われます」と説明する。
ぜん息の治療は、気道の炎症を抑える吸入ステロイド薬と、狭くなった気道を広げる吸入の気管支拡張薬が基本となり、この2つの成分を1つの吸入器に配合した吸入薬がよく使われる。発作が起きたときは、発作を抑える吸入薬を別途使う。
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