鋼材相場の上昇は、需要底打ちのタイミングと重なったことも影響したと見られている。
「10月以降、中国各地の地方政府が(住宅取得規制の緩和を通じた)不動産市況のテコ入れを強化するなか、住宅需要が徐々に回復しつつある。加えて、公共インフラ向けや製造業の鋼材需要は安定成長を維持している」
ビッグデータに基づいた市場分析を手がける富実数据研究院の院長の蔡拥政氏はそう述べ、さらにこう補足した。
「不動産市況の先行きが不透明ななか、鉄鋼メーカーは相対的に収益性が高い鋼板の生産を優先し、異形棒鋼の生産を絞った。そのため、直近では鉄筋の在庫が不足気味に(なり、価格が上がりやすく)なっていた」
鉄鋼の過剰生産に拍車も
中国の鉄鋼業界では、2023年上半期(1〜6月)はほとんどの主要メーカーの業績が赤字だった。しかし鋼材価格の上昇により赤字幅が縮小し、黒字に転換した企業もある。
そのため、鉄鋼メーカー各社は製品の(過剰生産を抑制するための)減産に消極的になっている。鉄鋼業界の専門情報サイト「我的鋼鉄網」のチーフアナリストを務める徐向春氏によれば、11月第1週(10月28日~11月3日)の主要鉄鋼メーカーの高炉稼働率は80%だった。
しかし市場全体の需給を俯瞰すれば、不動産開発向けの需要の落ち込みに対して、鉄鋼メーカーの生産水準は依然として高すぎる。前出のベテランアナリストは、業界の現状に対して次のように警鐘を鳴らす。
「鉄鋼メーカー各社は量(による規模のメリット)の競争で勝ち残ろうとしている。だが、中国市場にそこまで大量の生産能力は必要ない」
(財新記者:羅国平)
※原文の配信は11月8日
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