「認知機能の低下」訴えるアメリカ人が増えた理由 原因はおそらくコロナ後遺症による脳損傷
彼女が抱える問題は、国勢調査の質問にある「深刻な困難」には達していないものの、パンデミック前に経験したどんな状態よりも深刻だった(新型コロナウイルスの検査で陽性反応が出たことは一度もなかったため、感染症が原因だとは考えにくい、とカーボーンさんは話した)。副業でウエートレスをしていたが、それまで記憶できたことも含めて、注文に関するあらゆることを書き留めなくてはならなくなった。
カーボーンさんのメンタルヘルスはその後回復したが、記憶力や集中力は戻っていないという。
社会として真剣に受け止める必要性
パンデミックのストレスが、ADHD(注意欠如・多動性障害)など既存の症状を悪化させた可能性があると、ワシントン大学のマーガレット・シブリー教授(精神医学・行動科学)は指摘する。
「極度の強迫や緊張にさらされた場合、症状が一時的に悪化する場合がある」とシブリー氏。
国勢調査は自己申告に依存しているため、データは健康状態の変化とは関係なく、自身の認知機能に対する人々の捉え方の変化を反映したものになっている可能性があると話す専門家もいる。
研究者によると、障害者を受け入れる意識が一般に高まったことで、障害者が質問に正確に答えるようになった可能性がある。精神疾患や発達障害に関する動画がインターネット上で広まる中、パンデミック中に起こったニューロダイバーシティ(神経多様性)に対する意識と受容の高まりに影響された若者もいるとみられる。
だが、こうした認識の変化がデータに及ぼす影響はおそらく大きくないと、ブランダイス大学ルーリー障害者政策研究所のモニカ・ミトラ所長は話す。ミトラ氏によれば、認知機能の低下を訴える人々が増えたのは大部分において、実際に生じた健康面での変化を反映している可能性が高い。
「私たちは社会として、このことを極めて真剣に受け止める必要がある。どういった人たちがどのような影響を受けているのか、それに対して何ができるのかを理解する必要がある」とミトラ氏は言う。
(執筆:Francesca Paris記者)
(C)2023 The New York Times
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