激安「SHEIN」よりも安い!新興EC「Temu」の衝撃 SHEINは新山千春のウェディングドレスで話題

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その後、商品カテゴリーがより広く、買い替え頻度も高い女性向けアパレルにシフトし、2012年ごろに今のビジネスモデルが固まったと言われる。新山さんが購入したドレスは、SHEINにとって最も古くから取り扱っている商品なのだ。

SHEIN ウェディングドレス Temu
SHEINはウェディングドレスも扱っている(写真:同社Webサイトより)

デザインから商品化までのサイクルを最短1週間で行い、毎日1000点以上の新商品を激安価格で投入するSHEINが飛躍したきっかけはコロナ禍だ。ステイホームでネットショッピングをする人が増えると「おしゃれをしたいけど経済的に余裕がない」女性に急速に浸透した。

2021年に日本に進出するなど現在は150カ国以上で越境ECを展開する。複数の報道によると、2022年の売上高は約230億ドル(約3兆4600億円)と、H&Mグループの2235億5300万スウェーデン・クローナ(約3兆1900億円)を抜いてZARAを運営するInditex(2023年1月期:325億6900万ユーロ、約5兆3200億円)に接近した。

Temuは1年強で47カ国に拡大

SHEINのアメリカでの成功は快挙だった。ECの海外進出成功例は多くなく、楽天は2010年代に英語を公用語にして海外展開を進めたが事実上頓挫した。中国に進出したeBayとアマゾンは、まだベンチャーだったアリババに返り討ちにされた。

一方、アメリカではアリババのアリエクスプレス(AliExpress)がウォルマート、アマゾンの壁に跳ね返されている。中国発SHEINの大成功に触発され、2022年9月に「Temu」ブランドでアメリカに進出したのが、中国EC3位の拼多多(ピンドゥォドゥオ)だ。

拼多多は2015年に創業し、中国の地方に住む低所得者向けに激安商品を販売した。当初は「バッタものばかり売っている時代遅れのECプラットフォーム」と揶揄されたが、成長から取り残された消費者を取り込んでアリババと業界2位の京東集団(JD.com)を猛追。2018年にナスダックに上場し、8億人超のユーザーを擁するまでになった。

SHEINが女性向けのアパレルを主軸としているのに対し、Temuはアパレル、雑貨、家電と何でもありだ。そして拼多多のDNAを引き継いだTemuは、SHEINを上回る安さとスピード感で勢力図を拡大している。

アメリカに続いて今年初めにカナダ、イギリスでもサービスを始め、7月には日本に上陸した。9月には一気に10カ国に進出し、現在は47カ国で展開している。

最近の報道によると、Temuは2023年の目標としてGMV(流通総額)150億ドル(約2兆2500億円)を掲げていたが、7~9月の数字を見ると達成は濃厚で、180億ドル前後(約2兆7000億円)で着地する可能性がある。

この数字はSHEINの2022年の推定GMV(約300億ドル)の50~60%に相当する。SHEINの十数年分の数字をTemuは1年で積み上げたことになる。

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