日本人をさらに貧乏にする2024年「新紙幣」の盲点 「経済効果1.6兆円」は全体を見ないまやかしだ
今回の手数料引き上げには、窓口での振り込みからオンライン振り込みに誘導する目的もあるが、それもまたコストカットを強いられた結果だ。
この1.3万円の負担を、新紙幣を使うためには仕方ないと割り切れるだろうか?
その「労働」は、生み出す「幸せ」に見合うか
社会全体で考えたときに、「1.6兆円の経済効果」が何をもたらしているのだろうか。1.6兆円のお金は移動しただけで、使われたわけでも生み出されたわけでもない。
使われたのは「労働」で、生み出されたのは「幸せ」だ。
1.6兆円のお金が流れることで、数多くの労働がつながり、印刷機やATMや自動販売機などが新たに製造され、新紙幣の使用を可能にする。この新しい紙幣がもたらす幸せとは、主に紙幣の偽造防止に役立つことだ。
人口55万人の鳥取県の1年間の県内総生産が約1.9兆円だから、1.6兆円というと、それに匹敵する労働が注ぎ込まれることになる。この膨大な労働の負担に比べて、紙幣を利用する僕たちが感じる幸せが大きければ、この生産活動は社会にとって十分意味があることだ。しかし効用が小さければ、労働という負担が大きすぎることになる。
これが自然に発生した生産活動であれば、いちいち負担と効用を比較しなくても問題ない。労働の負担よりも効用のほうが必然的に大きくなるからだ。働く人は1.6兆円もらえるなら労働を負担してもいいと考え(1.6兆円>労働の負担)、利用者はその効用が得られるなら1.6兆円払ってもいいと考える(効用>1.6兆円)からだ。
おのずと、「効用>1.6兆円>労働の負担」という不等式が成り立つ。
ところが、この新紙幣の発行のように、政府の政策などによって半ば強制された生産活動ならば、「労働の負担>効用」になってしまうことも十分あり得る。人々の生活を豊かにする何らかの効用が生まれるのではなく、ムダな仕事だけが増える可能性があるのだ。
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