三菱電機が「20年ぶりの大規模事業改革」に本腰 かつての「電機業界の優等生」が抱く危機感
「100年に一度」といわれる自動車産業の変革期。顧客と一体となって変化に対応する体制をつくるため、選んだのが分社化だった。
分社化によって、電動化に向けた試行錯誤をする顧客とより緊密にコミュニケーションを取れるようになると、経営陣は見込む。迅速な意思判断も可能にする。三菱電機では製造部門と販売などの部門それぞれに意思決定権があり、判断が遅れがちだった。
自動車機器事業で扱う製品は3つのカテゴリーに分けられる。今後の処遇はそれぞれ異なる。
電動化やADAS関連は他社と協業も
まず、カーナビなどのカーマルチメディア。年間で約2000億円を売り上げていたものの、赤字を数年間垂れ流してきた。2022年度から新規商談は停止、徐々に事業を収束させることになっている。
在籍するエンジニアは、FAシステムや空調といった三菱電機のほかの成長領域に従事する予定だ。生産コストの抑制要求が強い自動車業界で培ったノウハウが、他事業でも活用できると三菱電機は期待する。
2つ目は、電動パワーステアリングシステムやオルタネータ(自動車用発電機)などの製品。年間売上高は約4500億円に上り、高シェアの製品を複数持つ。
その反面、世界シェア16%のEGR(排ガス再循環)バルブ、同15%のオルタネータ、同14%のスターター(エンジン始動装置)のように、EV化が進めば需要が少なくなる製品も多い。今後は採算性を一段と重視しつつ事業を継続する。
3つ目は、電動化やADAS(先進運転支援システム)に関わる製品だ。年間約2000億円の売上高がある。2年前までは重点成長事業として位置づけられていたが、投資に見合うほどの売り上げをつくれていない。そこで進めるのが、パートナーとの協業だ。
たとえば電動化の分野では、ギアの技術や部品同士をすり合わせる技術でシナジーを見込める企業との協業を目指す。加賀専務は、「多くの顧客の要望に合わせてモーターやインバーターといった個別の部品を取引するよりも、標準化した製品を提供したい」と話す。
モジュールの組み合わせやソフトウェアで付加価値を出すことにより、製造品目数を増やしすぎずに、顧客に合わせた製品を提供できるようになるとにらむ。ADASの分野でも同様に、他社と協業を進める方針だ。
分社化してできる新会社は三菱電機の100%出資でスタートする。ただ、電動化やADASの領域については将来的に、「三菱電機の資本が100%ではない、何らかの結論が出る可能性が高い」(増田CFO)。他社の資本が入る際には、新会社から当該部門がさらに切り出される見込みだ。
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