官僚を引き抜きロビイストにする「巨大IT」の裏側 「この前まで逆側にいたじゃないか」激しい攻防

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他社より静かにロビー活動を展開してきたように見えるアップルだが、アップストアの規制法案に対しては、かなり積極的に対抗している。

「アップルのロビーマシンは、いかにしてジョージア州を攻略し、勝利したのか?」

米政治専門紙ポリティコは2021年、米ジョージア州など州議会でのアプリストア規制法案をめぐるアップルの激しいロビー活動を白日の下にさらした。

同紙によると、ジョージア州の議員がアプリストア規制法案を提出すると、アップルは直ちに5人のロビイストを雇い、法案の反対運動を展開。ロビイストたちは法案をアップル寄りに修正するように働きかけ、勢いを削いだという。別の州の議員は「アップルは法案を潰すために脅迫し、多額の資金を使うことができた」と話したという。

州議会でアプリストアの規制法案が提出されるや否や、アップルが投資の約束や資金の引き揚げで議員に強い圧力をかけ、法案が失速する──複数の州で似たような事例が起きているという。

アップルはアップストアを規制する動きが強まる欧州でも2022年、グーグルを上回るトップクラスのロビー費を投じた。

そして、欧州と同様の規制を検討する日本でも、規制阻止に向けて政界関係者への働きかけを強めている。「ロビイスト」を務めるのは元官僚たち。アップル日本法人の「政務部長」は総務省出身だ。

日本も例外ではない

ある政界関係者は日本でのGAFAロビーの実態を明かす。

「GAFAは役所の優秀な若手を引き抜いてロビイストにしている。法務省、公取、経産省出身者もいる。この前まで逆側にいたじゃないか、と言いたくなるが、役所出身だけあって、誰がキーマンで、誰が敵で味方か、完全に把握している」

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「有力な政治家や将来有望な政治家には、実に丁寧にコミュニケーションをとり、政策を見て、デジタル分野の政策実現にお役に立てることがあれば、と近づいてくる。アメリカで議員と議論したい、と言えば、お任せください、と外務省よりきちんとした議員を提案してくる。かゆいところに手が届く、という感じだ」

GAFAと友好関係を築いて政策を進める議員もおり、中には、すでにGAFA側に取り込まれている大臣経験者もいるという。デジタル関連の政策を進めるうえで、日本でも利用者が多く、資金が豊富なGAFAの協力は議員らの大きな助けになるに違いない。

議員からすれば、GAFAと仲良くするメリットのほうがデメリットより圧倒的に大きいだろう。日本でも広がるロビーの網。GAFAロビーは決して遠い国の話ではない。

小林 泰明 読売新聞記者

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こばやし やすあき / Yasuaki Kobayashi

1977年生まれ。エネルギー専門紙記者を経て、2005年、読売新聞社入社。2015年~2016年、米ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)客員研究員。2019年からニューヨーク特派員、2022年に帰国。東京本社経済部所属。著書に『死刑のための殺人』など。

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