走りに関係する部分は、ローマと変わるところはない。V型8気筒3.9リットル・ツインターボエンジンは最高出力620cv、最大トルク760Nmを誇る。オープン化に伴う補強により車重は84kg増となるが、これだけのパワーがあれば、もはや誤差みたいなものだ。
右足の動きに即応してトルクが立ち上がる鋭いレスポンス、高回転域まで淀みなく、軽快なビートを刻みながら駆け上がっていく回転フィーリングも相まって、とにかく刺激的なのである。
意外だったのはエンジンそしてエグゾーストが奏でるサウンド。クルージング中はかなり静かなのだ。法規対応などもあり、フェラーリもさすがにこうなってしまうのか……と思いきや、シフトダウンしてアクセルを踏み込むと心地よいサウンドが響いてくる。正直言って終始、唸り吠えているよりも、このぐらいメリハリが利いていた方が、踏むのが楽しくなる。
乗り心地の上質さにも驚かされた。ボディがとてもしっかりしていて、速度抑制用のカマボコ状のバンプを乗り越えた時にも、まるでミシリともしないのだ。速度を高めていっても、しなやかな足さばきで入力をいなしつつ、車体の姿勢は常にフラットに保つ。快適性と、クルマとの対話感が、巧みに両立しているのである。
充実した先進運転支援機能
ひと通り走りを楽しんだあとは、高速道路を使って拠点に戻ることに。それならば、とルーフを閉めれば、室内はクーペのような静粛性と快適性で、ソフトトップであることを忘れさせられた。
先進運転支援機能も充実していて、緊急自動ブレーキ、車線逸脱時にステアリング制御も行うレーンキープアシスト、標識認識機能などは標準装備されている。クルーズコントロールを使っての帰路には、思わずオーディオのスイッチに手が伸びた。
あるいは「フェラーリにそんな装備は不要だ」と言う人もいるかもしれない。しかしながら、高い実用性と快適性、走りの歓びとこの上ない美しさが1台にすべて集約されていることこそ、ローマ スパイダーの魅力である。
フェラーリというブランドは孤高のイメージが強いが、実はこうして市場のニーズとしっかり対峙し、ユーザーの思いを汲み取ってきたからこそ今があるということを、このクルマはよく示していると言えるだろう。
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