不祥事で露呈した日本生命の稚拙な「顧客本位」 組織内部に透ける経営陣へのいびつな忖度

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日本生命の阪神支社に所属していた元営業部長が10月18日、詐欺の罪で懲役5年の実刑判決を受けた(写真:記者撮影)

日本生命が職員の不祥事対応で大きな失態を演じている。

きっかけは2022年8月、同社の阪神支社に所属していた元営業部長(林泰之被告)が、同僚などから金銭をだまし取ったとして、逃走先である島根県松江市の警察署に出頭し自首したことだった。

林被告による犯行をまったく把握できていなかった日生は、慌てたように捜査を担当した兵庫県警に問い合わせたが、どのような供述をしているのかといった情報はほとんど得られなかったようだ。

架空契約などで1億円超を詐取

対応が後手に回る中で、被害を同社に訴えてきた契約者などとの面談を通じて、架空契約や、保険業法が禁じる契約書の代筆といった行為に、林被告が繰り返し及んでいたことが徐々に判明していった。

問題視されているのは、その後の被害者への対応だ。2015年から2021年にかけて、計21回・計1億7975万円を詐取されたと訴えている40代の男性A氏は、日本生命から「これまで一切謝罪の言葉がない」と憤りを隠さない。

しかもA氏の被害の大部分を占める架空契約については、「日本生命の代理人弁護士から業務関連性がないと判断したと、昨年末に一方的に告げられ」(A氏)、現状では被害の回復には応じられないという姿勢を示されたという。

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