「日経平均株価2万7000円の懸念」が消えないワケ 市場が不安視する「中東以外のリスク」とは何か
何より長期金利は、インフレ連動債利回りを使って、投資家のインフレ期待(インフレ予想)による「金利形成分」と「それ以外の要因による部分」とに分解できる。それを見ると、債券市場におけるインフレ期待は、9月以降は主として2.2~2.5%の間で落ち着いており、最近のアメリカ10年国債利回りの上昇はインフレによるものではないといえる。中東情勢や原油価格の上昇は債券売り(金利上昇)のネタにされた、と解釈するのが妥当だろう。
「議会の体たらく」が短期的な株価下落懸念を高める
それでは、長期金利上昇の主因は何かといえば、アメリカにおける財政・予算管理能力の劣化と、それによる国債の格下げ懸念ではないだろうか。
時系列的に並べると、まず8月1日に大手格付け会社フィッチ・レーティングスが、アメリカ国債の格下げを発表した。さらに翌2日には、同国の財務省が国債増発計画を公表し、供給過剰による価格下落不安が広がった。こうして、景気でも物価でもない、意外な債券の売り材料が出た形となって、投資家は不意を突かれ、債券利回りが上がり始めた(債券価格は下落し始めた)。
その後も9月25日には、別の格付け会社大手ムーディーズ・インベスターズ・サービスが、新財政年度(10月)になっても予算が成立せず、政府機関が閉鎖されかねない事態を受けて、「混乱はアメリカ国債の信用面でマイナスだ」と表明し、将来の格下げの可能性を示唆した。
実際には、9月末のギリギリのタイミングで、11月17日までのつなぎ予算が成立、政府機関の閉鎖は当面回避された。しかし、再びこのつなぎ予算の期限になっても、本予算も次のつなぎ予算も成立せず、閉鎖への不安が繰り返されるおそれが残っている。
政府機関の閉鎖そのものは、とくに同国債の売り要因ではない。しかし議会が、先般騒がれた債務上限問題も含め、紛糾し続けていることから「政府・議会に財政・予算を管理する能力が乏しい」との見解が浮上し、これが国債の格下げ要因とみなされているわけだ。
議会の混迷は、足元でさらに深まっている。つなぎ予算案の採決において、共和党のケビン・オーウェン・マッカーシー下院議長が同党の主流派と民主党が組む形を主導し、予算を可決したため、共和党強硬派が反発し、同党内での対立が先鋭化した。
結果として、共和党強硬派がマッカーシー議長の解任動議を提出し、10月3日には史上初めての下院議長の解任が成立してしまった。その後も議長選出は難航し、議長不在のまま、下院は停止した状況に陥っている(日本時間10月22日時点)。
長期金利の上昇が好景気の結果であれば、株価への悪影響は限定的なはずだ。しかし、こうした議会の体たらくによる長期金利上昇は、「景気がそれほどよくもないのに金利ばかりが上がってしまう」という事態に陥っており、ぱっとしないアメリカ経済を金利上昇が下向きに叩き込む展開を招きかねない。
こうしてアメリカの景気と株価がともに下向きの動きを強めれば、日本経済や株価も一段と下方圧力を受け、筆者がもともと予想していた短期的な株価下落見通しを一段と補強することになってしまうだろう。
(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら