「会社員しながら副業」を軽く考える人が陥る困難 政府は推進モードだが、副業は休息の時間を削る

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やばい、どうしよう。なんて答えよう。読書? いやそれも面白みがなさそうだし、そもそも「おすすめの本とかある?」「あれ? 副業で書評家? とかやってるんだっけ、どんな仕事?」とか聞かれてもこのIT系大企業で適切な会話をできる自信がない。映画? これで「最近面白かった映画は?」とか聞かれても、うまく答えられない。

コンマ1秒間逡巡した後、私はこう答えた。

「上京したばかりなので、だいたい東京にいる大学の時の友人と久しぶりに会って、ご飯食べてますね!!」

こうして、「たしかに関西の大学って進学で東京くる子多いよねえ」「関西出身のやつってうちのチームに誰がいたっけ?」など、つつがなく会話は進んでいったのだった。

何も嘘はついていない。上京したばかりで、東京で就職した友人と久しぶりに会ってご飯は食べている。その前後に必死で原稿を終わらせてはいるのだが。

副業の話は他者にしにくい

会社員をやっていると、「休みの日に何をしているか」という問いは「話のネタになりそうな趣味はあるのか、プライベートはどこまで喋ってくれるのか」という意味であることをだんだん察するようになる。私はそのたび、バチェラーの最新話を見ただとか、最近結婚式ラッシュだとか、一番話が広がりそうな、楽しく喋ることができそうな話題を選んだ。

しかし一度も「締め切りがやばい」なんてことは、言えずに終わった。

言いたかったわけではない。副業の話は一切会社ではしなかった。したくなかった。

――なぜあんなにも、頑なに、したくなかったのだろう? 

と会社を辞めて1年経って、不思議に思う。

ちなみに会社の人から副業について揶揄されたことは、本当に、一度もない。むしろ本を買ってくれたひとがいたり、「実は小説読むの好きなんだよね」と明かしてくれるひとがいたり、テレビに出ることを知って「言ってよ! 見るよ!」と言ってくれるひとがいたりした。職場環境は良かった。先輩に本当に恵まれてたよなあ、としみじみ思う。

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