今のやり方を続けると、ワタミの浮上はない 「大量閉鎖85店上乗せ」を招いた真因

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「何でも一通りそろう」総合居酒屋というカタチを崩さず、安さも追求していくとなると、メニューには中途半端感が出て、ボリュームもクオリティも担保できない。おまけに創業以来コツコツと創り上げたブランドイメージも低下してしまった――。ワタミはまさに負のスパイラルにどっぷりはまってしまっている。

「安くて」「美味しい」に原点回帰

3月19日に開かれた商品戦略発表会で新社長の清水邦晃氏は、10年振りとなる1皿当たりの単価引き下げ実施を発表した。「料理が遅い」「量が多すぎて注文できない」「価格が高い」といった自社お客様アンケートの結果を踏まえ、アイテム数を絞り込み、食材数を少なくし、作業工程も減らす。そうすることでオペレーションを安定させ、従来の「安くて」「美味しい」というワタミへの原点回帰を表明し、既存顧客の満足度向上を狙っていくという。

もちろん、たとえ目立った特徴がなくても、値段相応の美味しくてボリュームもしっかりある料理を提供できるなら、お客の記憶に残るかもしれない。ただ、これだけで浮上できるかというと予断を許さない。あくまで総合居酒屋を志向して目立った特徴がないという今まで通りのメニューなら、お客の関心を集められない可能性があるからだ。

そもそも、飲食業はただ食事を提供すれば良い訳ではない。安さだけを求めるお客はファミレス、場合によって一部の「吉野家」のようにファストフードでもお酒を飲んで食事ができる時代になっている。外食におカネを払うというお客の期待度は高い。食事が美味しいのは大前提で、それ以外にもその空間やサービスなどの付加価値も含めて、トータルで判断する。「もう一度来たい」と思わせるポイントがなければ、リピーターとはなり得ない。

メニューの工夫だけにとどまらず、雰囲気が良く清潔感のある店づくりやそれに付随する気持ちの良い接客など、地道な取り組みにも手は抜けない。もう一度、すべてを基本に立ち返りワタミブランドを再構築する。間違いなく時間のかかる方法だが、一歩ずつ積み上げていくしかない。

三上 成文 フードアナリスト・ブランディングプランナー

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みかみ しげふみ / Mikami Shigefumi
外食大手企業での現場経験を経て、広告代理店にて広告営業を経験。2009年、当時のクライアントであった外食ベンチャーにて、ブランディング/PRに携わり、自社PRだけでなく、地方自治体や他社との業務提携PRを担当。2014年12月より、海外人気店の日本展開PRに携わる。

 

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