ヤマト、パート社員が労組結成「モノ扱いしないで」 日本郵便への業務移管後に完全解雇で憤怒の声

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「やめなくちゃ、次を探さなくちゃと思っていた矢先、1月まで在籍すれば慰労金が出るということになり、とどまった。それでも話が毎回違ってきていて、困惑している」。パート社員の声からは、現場への指示が混乱している様子がうかがえる。

今後、組合は会社側に団体交渉の申し入れをし、10月25日までに交渉を開催するように要請していく方針だ。

交渉の主なポイントは「まずは来年1月末の解雇を撤回させること。そのうえで希望に応じた協議を尽くしてもらうこと」と、組合を支援する建交労の山内健人氏は語る。パート社員にはシングルマザーも多く、生活や所得に影響が出てくるという。

会社の責任をどう果たすのか

長尾社長が「日本郵便の精度の高さ、作業の安定性は、一生懸命に真似してもたどり着けなかった」と語ったように、ヤマトにとって投函ビジネスは見通しのつかない事業だった。整理はやむを得ない決断だった。

しかし、トップが自ら再就職などキャリアのサポートを明言したからには、それを実行することが会社の責任だ。丁寧な説明はもちろん、異動での対応なり、就職支援を急ぐべきだろう。

また、この件は茨城だけにとどまる話ではなさそうだ。全国でサポート体制を構築できているのか再点検し、早急に支援の具体的な内容を固めて公表する必要がある。本来、現在のヤマトは日本郵便への移管を無事に進めることが最重要課題のはず。社内でつまずいているようでは、今後に不安が募るばかりだ。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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