C型肝炎に"特効薬"、沸き上がる期待と不安 治癒率は驚異の96%、第2弾も発売目前

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実は、ソバルディは序の口にすぎない。同薬を開発した米国の製薬会社ギリアド・サイエンシズは、今秋にも1b型のC型肝炎を対象とする経口薬「ハーボニ」を日本で発売する。

1b型は国内のC型肝炎患者の7割を占める。インターフェロンによる治癒率は5割に満たないが、ハーボニは国内の臨床試験で100%という治癒率をたたき出した。「C型肝炎は“治る”が前提になる」(山梨県立病院機構の小俣政男理事長)。

ギリアドはこの二つの薬を欧米などで2013年末から順次発売。成長は爆発的で、ソバルディとハーボニを合わせた売上高は、初年度から124億ドル(約1兆4900億円)に達した。抗インフルエンザ薬「タミフル」でも知られるギリアドは、1年にして世界20位(13年)から同10位の製薬会社へ飛躍した。

高い薬価が財政を圧迫

治癒率の高い2つの薬が国内で手に入るようになるのはC型肝炎患者にとってこの上ない朗報。だがその反面で、別の悩みが頭をもたげ始めている。医療財政への負担だ。

1日1錠6万円超のソバルディを12週間服用すれば、治癒までに要する薬剤費は併用薬を含めて約546万円。インターフェロンを使った治療の薬剤費は約223万円なので、倍以上に相当する。

国内45万~60万人の2型のC型肝炎患者のうち、仮に半数程度が治療を受けるとすると、薬剤費は約1.5兆円。18日の決定により、このうちの大半が、国民の払う保険料と国や自治体からの助成金で賄われることになる。ハーボニの場合は、母数がその倍以上に膨らむ。すでに40兆円近くに達している国の医療費は、さらに膨張する。

むろん、特効薬でC型肝炎を“撲滅”できれば、中長期では肝臓がんなどにかかる医療費を節減することになるかもしれない。損して得を取れるか。医療行政の長期的な視座が問われている。

「週刊東洋経済」2015年5月30日号<25日発売>「核心リポート05」を転載)

長谷川 愛 東洋経済 記者
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