ファナック、沈黙を破った超優良企業の素顔 稲葉善治社長が激白、「秘密主義じゃない」

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偉大な父から“卒業”し、名実共にファナックの指揮を執る善治社長。株主重視の方針を打ち出す一方、成長投資にも余念がない。

今後の市場拡大に備えて、総額1300億円という巨額投資を決定。栃木県に新工場を建設し、本社内には研究棟を増やす。 

新工場建設のために購入した栃木県内の産業用地(中央の三角部分)。1000億円を投じる(写真は栃木県提供)

──ファナックが目指すものとは。

製造業の自動化、ロボット化。これに60年間、特化してきた。それは変わらない。ものづくりの自動化は、人類の幸福や生活向上に貢献できると考えている。ロボットが人間の仕事を奪うという見方があるが、逆でしょう。人にもっと自由な時間をもたらす、ただの道具だ。

──そこに特化すれば、数字は後からついてくる、と。

そう。企業は永続性が非常に大事で、それを保つために勝ち続けなければならない。

勝てるマーケットで勝負するので、むやみに手を広げない。工場の自動化、ロボット化という分野で私どもは最強だと考えているし、どんどん強化していけば、永続性を確保できると考えている。

山梨の本社前の道路にある道路標識

ーー業務上、山梨の本社が遠いと思うことは?

遠いとは思うが、これだけの敷地はあまりない。47万坪の中に22棟の工場、研究所、本社がある。意思疎通がものすごく早い。集まれといえば集まれる。東京が本社だったら、こんなことはできない。一極集中のリスクはゼロとはいわないが、メリットのほうがはるかに大きい。

「明日、私がいなくなっても・・・」

──現時点で課題を挙げるとすれば何か。

NC装置のようにこんなに長く続いているビジネスモデルはあまり例がない。どこかでこれを変えていかなければならない時期が来るのだと思う。ネットワークやロボットと絡めたりして、強みを増す。追随されるから、あまり言いたくないんだけど……。

要は、手の内をさらしたら、それだけ不利になる。話すのが嫌いだとか、秘密主義だとか誤解されているが、企業にとって不利なことは、当然、話せない。そこは理解してほしい。

社長インタビューに同席した、山口賢治副社長(右)と権田与志広副社長(左)

──まだ早いかもしれないが、企業の永続性を保つうえでは、後継者を考えることも必要ではないか。

私も年(66)だから、早いということはない。だが、(誰が後継か)お話しはできない。

──実際に後継は育っているのか。

育つということではない。これだけの人材がいる。3人の副社長は代表権も持っている。もう明日、私がいなくなっても、大丈夫ですよ。

「週刊東洋経済」2015年5月30日号<25日発売>「核心リポート04」を転載)

宇都宮 徹 東洋経済 記者

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うつのみや とおる / Toru Utsunomiya

週刊東洋経済編集長補佐。1974年生まれ。1996年専修大学経済学部卒業。『会社四季報未上場版』編集部、決算短信の担当を経て『週刊東洋経済』編集部に。連載の編集担当から大学、マクロ経済、年末年始合併号(大予測号)などの特集を担当。記者としても農薬・肥料、鉄道、工作機械、人材業界などを担当する。会社四季報プロ500副編集長、就職四季報プラスワン編集長、週刊東洋経済副編集長などを経て、2023年4月から現職。

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中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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