「外食チェーン」値上げで客が離れる過酷な現実 価格据置を続けるサイゼリヤは客数が増加

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懐具合に余裕のない消費者が増えてくれば、家計支出における外食のシェアは下げられ、外食の頻度は減らされる可能性がある。そうなると単価が安く、かつ、コスパの高い外食チェーンが客数を増やして、結果として業績を向上させることが想定される。

価格を据え置いているサイゼリヤ

その意味では、価格据置を原則守り続けているサイゼリヤはこれからさらに消費者の支持を集めるかもしれない。ご存じの方も多いと思うが、いまだにサイゼリヤなら、ランチが500円でメニューが選べるうえに、十分なボリュームと品質を保っている。

2024年8月期第3四半期決算では、国内サイゼリヤ事業はコロナ前の客数に戻っておらず、増収ながら赤字になったことを懸念するような論調も散見されたが、昨今の株価は競合ファミレス比で圧倒的なパフォーマンスを示すなど、市場の信認は厚い。

サイゼリヤの第3四半期決算はほぼ計画通りであり、足元の既存店売り上げの様子を見ても、第4四半期ではすでにコロナ前を上回って推移していると推定されるため、当初計画を上回る業績回復となるだろう。

このコスト環境のもとで、価格を据え置いたまま、事業計画を達成するというのだから、やはりこの会社は際立っている。他社がコスト上昇に耐えられず、価格改定を実施するのを横目に価格据置政策を印象付ける。

その後、実質賃金マイナスが続いて、消費者の価格選好がさらに高まると、サイゼリヤの競争力はこれまで以上に確固たるものになる、そんなことを読み切っていたかのようだ。あくなきコスパ改善へのチャレンジが、これまで以上に、外食チェーンの競争力に直結するようになる、ということなのだろう。

中井 彰人 流通アナリスト

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なかい あきひと / Akihito Nakai

みずほ銀行産業調査部で小売・流通アナリストに12年間従事。2016年同行を退職後、中小企業診断士として独立、開業。同時に、慶應藤沢イノベーションビレッジでベンチャー支援活動を開始、近年は地方創生支援活動も実施中。並行して、流通関連での執筆活動を本格化し、TV出演、新聞、雑誌などへの寄稿、講演活動などを実施中。2020年よりYahoo!ニュース公式コメンテーター、2022年Yahoo!ニュースオーサーを兼務。主な著書「図解即戦力 小売業界」(技術評論社)。現在、東洋経済オンライン、ダイヤモンドDCSオンライン、ITmediaビジネスオンライン、ビジネス+ITなどで執筆、連載中。

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