マネックス証券「ドコモ傘下入り」をめぐる皮算用 鼻息荒いドコモと「次の一手」模索のマネックス

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マネックス証券の純資産額は2023年3月末で487億円。それに対して今回、中間持ち株会社の株式価値は970億円とした。つまりマネックス証券にはそれだけの企業価値があると、ドコモが認めたわけだ。

ある証券会社幹部はこの金額が「高めだ」と指摘。「マネックスグループは、レッドオーシャン(苛烈な市場)から手を引くだけでなく、高値で売却できたのだとしたら見事」と舌を巻く。

ドコモへの株式売却価額は約466億円で、マネックスグループには売却益182億円が発生する。マネックス証券の2023年3月期の純利益は26億円ななだけに利益インパクトは大きい。「うまくいった取引」(同)というわけだ。

今後は「何業」の会社に?

マネックスグループはさしあたり株売却で入ってくる資金を元手に、成長領域とするアセットマネジメントビジネスを中心に投資を進める。競争が激化する証券ビジネスから距離を置き、事業ポートフォリオの再編成に乗り出すとの見方もある。

気になるのは、グループとしてのマネックスは、今後どこへ向かうのかだ。暗号資産(仮想通貨)交換所の「コインチェック」やアメリカの証券会社「トレードステーション」、資産運用を扱う「マネックス・アセットマネジメント」が残るが、この先は何を中核事業とするかに関心が集まる。

マネックス松本氏とソニー出井氏
写真は1999年8月、マネックス証券の誕生を支援したのが当時ソニー社長だった出井伸之氏(右)。「出井さんなくしてマネックスは生まれませんでした」と松本氏は述べている(撮影:高橋孫一郎)

「マネックスは『何業』の会社になるのか」。10月4日に行われたアナリスト向け説明会では、このような質問も出た。松本氏は「個人の生涯バランスシートの最適化というビジョンに向かって事業を行っている。何業かと言われると難しい」と答えた。

この答弁に表れているように、マネックスの創業者でカリスマ経営者でもある松本氏は、事業構造改革の方向性を明確に示せていない。

先だって9月4日に開いた事業戦略説明会では、グループ戦略の説明を清明氏に任せ、自身は医療分野の新規事業について説明しただけだった。金融業への興味が薄れたかのようにもみえるが、東洋経済の問いに松本氏は「金融への情熱は失われていない」と断言した。

ドコモとの提携発表翌日の10月5日、マネックスグループの株価はストップ高となる659円を付け、年初来高値を更新した。配当の下限をこれまでの2倍となる30円に引き上げると発表したことも影響しているが、今後の成長への期待の表れでもある。

この先、どういった方向性を打ち出すのか。マネックスグループの「次の一手」が問われる。

高橋 玲央 東洋経済 記者

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たかはし れお / Reo Takahashi

名古屋市出身、新聞社勤務を経て2018年10月に東洋経済新報社入社。証券など金融業界を担当。半導体、電子部品、重工業などにも興味。

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