社会人の学び直し「時間ない」と悩む人がすべき事 リスキリングのマトリックスを基に方向性を整理

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最近は円安やインフレの影響も大きいですし、現在のフルタイムの仕事をやめてまで、海外の大学院に通うのに何千万円もの投資をするのはリスクが高すぎると思う方も多いでしょう。

けれども、新型コロナウイルス感染症の拡大をきっかけに、アメリカの大学院もあり方が根底から変わりつつあり、オンラインコースの提供を最優先事項としている大学院もあるように見受けられます。そのような大学院で、リスキリングを目指す選択肢もあります。

ちなみにコンピューターサイエンスやプログラミング、UXデザインなどのIT系のスキルは、英語で勉強したほうが圧倒的に効率的です。英語と日本語で、教材の内容もかなり違います。

これもまた私の知り合いの話ですが、自分は英語ができないけれど、英語でMBAを取ってしまえば一石二鳥だからといって、米マサチューセッツ州立大学のMBA(UMaas)をオンラインで取ろうとしているマーケターの男性がいます。パロアルトインサイトのポッドキャストのLevel5で、リアルタイムのリスキリングについて話してくれています。

努力の見返りは大きな「リターン」

自分が日本語しか話せないからといって、日本語の参考書ばかり読んでいるより、ベストなものを学びにいく姿勢や一石二鳥の発想などは、リスキリングではとても重要だと思います。前にも説明したように、リスキリングは掛け算の相乗効果で考えるべきだからです。

AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング
『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

彼がMBAを取得したあかつきには、英語が堪能なマーケターとして、職業選択の可能性は一気に広がるはずです。外資系企業だけでなく、海外駐在も可能かもしれません。

時間と労力をかけてリスキリングに取り組むのであれば、リターンは多いほうがいいと考えるのが普通だと思います。

例えば、アメリカではハーバード・ビジネス・スクールの卒業生の平均初任給は約17万ドルといわれており、過去10年間でもこの数字は上昇傾向にあることがわかっています。

全ての人に適した選択肢ではありませんが、自身のキャリアトランスフォーメーションを狙いたい人、時間をかけてでも10年後、20年後を視野に自分に投資をしておきたい人、その余裕がある人には挑戦する価値のある選択肢です。

石角 友愛 パロアルトインサイトCEO/AIビジネスデザイナー
いしずみ ともえ / Tomoe Ishizumi

2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得。グーグル本社で多数のAIプロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテックや流通AIベンチャーを経て日本企業にAI開発を行うパロアルトインサイト(www.paloaltoinsight.com) をシリコンバレーで起業。著書に「いまこそ知りたいAIビジネス」(Discover21)『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)、『私が白熱教室で学んだこと』(CCCメディアハウス)、『AI時代を生き抜くということ』(日経BP)など多数

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