アマゾンが反撃!「AI企業へ5900億円出資」の意味 クラウド市場の覇権死守へ、透ける独自路線

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アンソロピックへの出資は、アマゾンの“反撃”と言えるだろう。

アマゾンは足元のブーム以前から、ECサイト内での検索や音声アシスタント「Alexa」の応答などで生成AIを活用してきた。しかしこの1年、生成AI分野で圧倒的な独走ぶりを見せつけたのはマイクロソフトだった。

生成AIのポテンシャルに目をつけたマイクロソフトは、2019年にOpenAIへ10億ドルを出資。OpenAI側のフィードバックを基に、生成AIサービスの運用コストやレスポンス、信頼性などの改善に貢献できるクラウドの開発を進めてきた。

2022年11月にOpenAIがChatGPTを公開すると、2023年1月には同社のLLMをクラウド「Microsoft Azure(アジュール)」上で利用できる「Azure OpenAI Service」の提供を始めた。ChatGPTよりもセキュリティを高めたかたちで利用できることから、1万1000以上の組織に導入するなど、クラウド市場に生成AIで“電撃戦”を仕掛けた。

MSの猛攻を看過できない理由

マイクロソフトのクラウド強化は、アマゾンにとって無視できない動向だ。

AWSを展開するアマゾンは、世界で2471億ドル(2022年度、調査会社・Canalys調べ)に上るクラウドインフラサービス市場で長年にわたり首位を守ってきた。

ところが近年はマイクロソフトが猛追。2023年8月にCanalysが発表した最新四半期のシェアでは、アマゾンが30%、マイクロソフトが26%と、4ポイント差にまで肉薄している。

アマゾングループ全体のポートフォリオにおいても、好採算のクラウド事業は収益性の低いEC事業を補うという意味で重要な役割を持つ。仮にクラウド事業の競争力が低下するとなれば、経営の根幹が揺るぎかねないのだ。

マイクロソフトは2023年1月、今後の数年間でOpenAIに数十億ドルを追加出資する方針も発表している。クラウド覇権を懸けて、マイクロソフトが口火を切った「AIマネーゲーム」にアマゾンが乗るか否かは、テック業界における関心事だった。

アンソロピックへの出資により、アマゾンのAI戦略が一歩前進することは間違いない。では今後、マイクロソフトとOpenAIのように、アマゾンがアンソロピックをマーケティングの前面に押し出すかといえば、そう単純な話でもないようだ。

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