アマゾンが反撃!「AI企業へ5900億円出資」の意味 クラウド市場の覇権死守へ、透ける独自路線

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AWSは、圧倒的なサービスのバリエーションを武器に、スタートアップをはじめとしたITリテラシーの高い企業を中心に支持されてきた。2023年4月に投入した生成AIアプリの構築サービス「Amazon Bedrock」に関しても、LLMをはじめとする基盤モデルは独自の「Amazon Titan」やアンソロピックのクロードなど複数提供し、顧客がニーズに合ったモデルを選択できる形で展開している。

マイクロソフトの猛攻に押され、それ以外の戦略を取れなかったという側面も否めないが、OpenAIのLLMを売りとするAzure OpenAI Serviceに対し、得意の“バリエーション”で対抗する道を取ってきた。

アメリカの調査会社・ガートナーのバイスプレジデントアナリスト、チラグ・デカテ氏は、アンソロピックへの出資を発表したアマゾンが今もなお「オプショナリティを重視している」と指摘する。「グーグルは先日の(クラウドに関する)サミットで、100以上の基盤モデルのサポートを発表した。アマゾンも同様のことを行っている」(同氏)。

「選択肢の1つ」を出資で磨き上げる

実際、10月3日に都内で開かれたAmazon Bedrockに関する記者説明会では、アンソロピックのCEOのメッセージこそ流されたが、むしろ強調されたのはメタ・プラットフォームズのLLM「Llama(ラマ) 2」がモデルのラインナップに追加された点だった。

AWSのAI部門責任者、ヴァシ・フィロミン氏(左)と、アンソロピックのダリオ・アモデイCEO
10月3日の記者説明会に登壇したAWSのAI部門責任者、ヴァシ・フィロミン氏(左)と、ビデオメッセージを送ったアンソロピックのダリオ・アモデイCEO(記者撮影)

AWSの生成AI責任者を務めるヴァシ・フィロミン氏も、アンソロピックとの提携について「双方にとってウィンウィンだ」と述べるにとどまり、あくまで今回の出資は選択肢の1つを磨き上げるという意味合いに近いことをうかがわせた。

独自路線で立ち向かうアマゾンを尻目に、マイクロソフトはトップスピードで進める生成AI戦略の手を緩めていない。

2023年11月からは、資料作成の「Office」やビデオ会議の「Teams」などを包含したクラウドサービス「マイクロソフト365」向けに、月額30ドルで生成AIアシスタントサービスをスタートする。

マイクロソフトは、こうしたビジネスツール市場での優位性を生かし、顧客を関連するクラウドサービス群に引きずり込むことが可能だ。一方、ビデオ会議の「Amazon Chime」などを展開しながらもビジネスツールで大きく劣るアマゾンに、同様の戦術は取れない。

OpenAIによる最新LLMの発表や、元祖AI企業であるグーグルの追い上げも見込まれる中、アマゾンはクラウド市場でのプレゼンスを保てるか。アンソロピックとの提携に安住せず、あらゆる面から矢継ぎ早に手を打つ必要がありそうだ。

森田 宗一郎 東洋経済 記者

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もりた そういちろう / Soichiro Morita

2018年4月、東洋経済新報社入社。ITや広告・マーケティング、アニメ・出版業界を担当。過去の担当特集は「サイバーエージェント ポスト藤田時代の茨道」「マイクロソフト AI革命の深層」「CCC 平成のエンタメ王が陥った窮地」「アニメ 熱狂のカラクリ」「氾濫するPR」など。

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