ジャニーズ新会社との契約で問われる「人権意識」 日本の芸能界は特異なパワーバランスが常態化

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「タレントの安全面に関して、もっと声をあげやすくするには」など、人権状況のあくなき改善プロセスを回す仕組みが必要です。「コンプライアンス(法令遵守)に対応していれば問題ない」という姿勢では足りません。

タレント業務に必要な知的財産は新会社が引き継ぐとしていますが、もし補償会社(スマイルアップ)と新会社の経営陣が同じだとすると、知財取引には相互の利益背反の可能性などの気がかりな点も出てきます。

一方で、もし本当に旧ジャニーズ事務所による補償と救済への覚悟を見せるのであれば、知的財産についてもいろいろな方策を考えることができるでしょう。

極端な案としては、今回の経緯を踏まえてタレントが他の事務所に移籍した場合でも、これまでの楽曲使用権や肖像のパブリシティ利用権を開放する。そうすればタレントが他の事務所に移籍するのを条件に、企業やメディアが広告や番組に起用してキャリアを支えていくようなことも可能になります。

広告主企業に求められる判断

広告主の企業は、これから社名が公募される新会社の状況のみを見てCM契約の是非などを判断するのでは正しくありません。現時点ではあくまでも、ジャニーズ事務所が補償会社とオペレーション会社に分割されたにすぎない可能性があります。スマイルアップの補償・救済内容が十分でなければ新会社とは契約をしないなど、総合的に判断したうえでの関与が必要です。

企業は今、海外からの視線も含めて、人権問題にどのような姿勢を示すのか問われています。これまで日本企業はとかく人権問題に対し『沈黙は金』とばかりに静観する傾向がありましたが、今回のジャニーズ問題でようやく企業の当事者意識が出たとも言えます。

ジャニーズタレントを起用しないという企業の判断は、自社が「人権侵害に対していかに毅然と対応するか」という社会に向けたメッセージの側面も大きいわけです。

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