隂山:はい。たしかに、書いて覚えることは可能ですし、方法論として完全に間違っているわけではありません。しかし、何を、どのように、どれくらい書くのかを考察してみると、書くことによって「ああ、この漢字はにんべんなんだな」と覚えようとしている人はとても少ないのです。
「100回書いて覚えるぞ!」と考えるのは、書くこと自体が目的になっていて、覚えようという意識が少なく、逆に覚えられなくなってしまうんですよね。
布施川:なるほど。「丸暗記」や「反復練習」も、効果的に実施しなければ逆効果になってしまう可能性があるんですね。
隂山:そうです。それで行くと、『ゆっくり丁寧にやってみよう』なんていう反復練習のアドバイスは完全に逆効果だといっていいと思います。
「ゆっくり丁寧」より「雑に速く」
布施川:勉強ができない子によく言いますよね。「とにかく、時間をかけてゆっくり、丁寧にやってみよう」と。でも、それも先生としてはよくないとお考えなんですね?
隂山:はい。逆効果だと思いますね。考えるときって、思考を巡らせるから、速度が大事なんですよ。頭の回転なんかも、『速い』と形容されますよね。時間をかけたって、いい考えは降ってきません。子どもの考える隙の消失にもつながりかねない。ゆっくり丁寧ではうまくいかないんです。それよりもまずは、「雑に速く」です。
布施川:雑に速く! つまり、クオリティーにこだわらずに物事を考えてもらうのですね。
隂山:そうです。字のきれいさを考えたり、丁寧に問題を考え込んだりなんてことをせずに、とにかくスピーディーに物事を考える習慣をつけさせたほうが、思考がうまくできるようになりやすいと感じます。
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