マクドナルド、「小型店ひっそり開業」の深い意味 「新たな出店形態」を模索し始めた3つの理由
1つ目は、店舗の増加へ向けた新形態店舗の開発だ。マクドナルドは2023年8月末時点で全国に2966店舗を構える。今後も年間20店程度純増させる算段だ。
だが、「出店できる物件が本当に少ないので、東京の都心部にマクドナルドの店舗を出店するのは非常に難しい」(日本マクドナルドHD幹部)。実際に、東京の繁華街である上野駅周辺や日本橋周辺といったエリアには現在、マクドナルドの店舗が存在しない。
マクドナルドは駅前や繁華街で展開するビルイン型の店舗については、200平方メートル以上の店舗面積を基本としている。
パティ(ハンバーグ)やバンズを焼く設備から、フライドポテトやナゲットなどの調理に使うフライヤーも必要なため、キッチンのスペースはかなり広いものが求められる。さらに、客席にもスペースを割かなければならない。
ところが、人が集積するエリアの物件は、飲食店を含めた複数業態との出店競争が激しい。そもそも、キッチンなどに必要なスペースを確保できる大きめの物件となると、どうしても案件が限られる。
過去には「サテライト」というメニューを絞った、比較的小さい店舗の出店も進めていたが、「フルメニューを提供できないことが、結果的にその店舗の弱みになった」(日本マクドナルドHDのベテラン社員)ため、現在はすべてのメニューを提供できる店舗の出店を基本方針とする。
その点、ANNEX店のようなテイクアウト・デリバリー専門店は客席などのスペースが不要で、125平方メートルほどの店舗面積でも出店できる。フルメニューを提供するという基本方針にも沿っている。
ドミナント戦略の新しい形
2つ目の理由は、すでに店舗を展開するエリアのさらなる強化だ。テイクアウト・デリバリー専門店を増やすことは、1つのエリアに複数の店舗を集中させる、いわゆる「ドミナント戦略」の深化につながる。
複数の店舗を出店することで、1店舗ではリーチできないエリアの消費者を取り込むことが狙える。とくに、駅周辺では線路などでアクセスが分断される場合も多い。その際に、駅を挟んだ反対側にもう1店舗出店することで、マーケットの拡大が期待できる。
通常の店舗を同じエリアに複数出店させる場合、それぞれの店舗で客を取り合うカニバリゼーション(共食い)が起こる懸念もある。しかし、一方の店舗をテイクアウト・デリバリー専門店にすることで、店内飲食と自宅などで食べる客を分散させることも可能になる。
3つ目の理由は、デリバリー需要の高まりへの対応だ。コロナ禍で消費スタイルが変化し、デリバリーなど非接触でのサービスは消費者の間に定着した。
ハンバーガーチェーンでもコロナ禍を経て、テイクアウトやデリバリ-の比率は上昇している。例えば、モスフードサービスが運営するモスバーガーでは、全注文数に占める店内飲食の割合がコロナ前は4割だったが、コロナ後は3割まで減少した。
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