業績不振のシャープ、「堺工場」に半導体転用説 半導体活況を当て込み、"お荷物"工場を再生?
「あのイベントは、ビッグボスの強い意向だ」と、あるシャープ関係者は語る。シャープにとってビッグボスとは、鴻海の元董事長で創業者の郭台銘氏ただ一人を指す。郭氏は現在、台湾総統選挙への出馬を表明し経営から身を引くが、隠然として影響力を持つ。
足元で鴻海が頭を悩ませているのが、シャープの業績不振だ。23年3月期決算は2608億円と巨額の最終赤字に陥った。現在の鴻海経営トップ、劉揚偉・董事長もここ数カ月で複数回来日。シャープ本社を訪問しテコ入れをせかしている。
赤字の原因は、22年6月に再度子会社化した液晶パネルの製造会社、堺ディスプレイプロダクト(堺工場)の不振だ。シャープは12〜16年に同社株の大部分を郭氏の投資会社に売却したが、22年2月に突如再子会社化を発表した。
液晶パネル市況が改善しない中、鴻海が注目したのが日本の半導体政策だ。複数の政策関係者は、堺工場を半導体用に転用できないか、という話が選択肢の1つとして浮上していると語る。
カギを握る「チップレット」
カギを握るのは、半導体のパッケージング技術「チップレット」だ。機能が異なる複数の小さなチップをブロックのように組み合わせて、1つのパッケージにする。半導体の微細化が限界に近づくといわれる中、性能を引き上げる別の技術として注目が集まる。その際、従来のシリコンや樹脂の基板ではなく、ガラス基板を用いる流れがある。その製造に、技術的に類似する液晶のラインを活用できないかというのだ。
とはいえ、「堺工場は液晶用に特化しており、完全な転用は容易ではない。補助金をもらい、稼働率が下がったラインを自分たちで一部半導体用に転用するのが落としどころでは」(シャープ元幹部)との指摘もある。
事業再建の道が険しい中、国を挙げた半導体戦略はシャープへの助け舟となるか。
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