「半導体人材を育成せよ」九州は産学官で総力戦 TSMC誘致で「年間1000人不足」自前で育てる事情

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同社はグループ企業のノウハウを基に、素人でも1カ月で保守点検を習得できるプログラムを準備。2025年には、グループ全体で現在の約2倍となる7800人の半導体分野への派遣を目指す。半導体産業は需要の波が激しく、調整期には派遣先の仕事が減る。その空き時間にリスキリングを施し、個人のスキルアップにつなげる狙いだ。トップレベルは派遣社員でも年収1000万円を超えるといい、森本健一社長は「本人の努力や適性次第でスキルアップを重ね、待遇を上げられる業界。未経験で入っても稼げる成功例を増やしたい」と語る。

現場で求められる作業を再現

工業系の人材サービスに強い日総工産も、4月に熊本県大津町で研修所を開設。最新世代の製造装置2台を導入し、模擬クリーンルーム内で稼働させる。起動と停止から不具合の修理まで、現場で求められる作業を限りなく再現できる。

研修所は職業訓練校の認定を受け、講師は指導員の国家資格を持つ元エンジニア。顧客からの要望に合わせ、カリキュラムを柔軟に変更するうえ、派遣後の再教育も請け負う。約2カ月の養成期間中は確認テストをほぼ毎日実施し、すべてに合格した人だけを顧客企業に派遣する仕組みで質も担保。生産技術職などを育てる高度なコースも備える。

日総工産が導入した最新世代の製造装置(記者撮影)

「人手不足の原因は半導体メーカー内部の空洞化だ」と、ある人材派遣会社の幹部は指摘する。かつての凋落に伴って人を減らした結果、働き盛りの中堅がすっぽり抜け落ちたというのだ。技術を伝える人が失われ、自前での育成が困難に。それを産学官の連携で必死にカバーを試みる九州。一大産地として栄えた往時の輝きを取り戻すカギは、その成否が握っている。

石川 陽一 東洋経済 記者

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いしかわ よういち / Yoichi Ishikawa

1994年生まれ、石川県七尾市出身。2017年に早稲田大スポーツ科学部を卒業後、共同通信へ入社。事件や災害、原爆などを取材した後、2023年8月に東洋経済へ移籍。経済記者の道を歩み始める。著書に「いじめの聖域 キリスト教学校の闇に挑んだ両親の全記録」2022年文藝春秋刊=第54回大宅壮一ノンフィクション賞候補、第12回日本ジャーナリスト協会賞。

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