買われすぎの日米の株価はどこまで下落するか 日本株は割高ではないが、円安は織り込み済み

拡大
縮小

金融面では、経済全体の資金量を測るM2の前年比を見ると、史上初のマイナス圏に陥っている。これは、FED(連銀)の量的引き締め(ただし、経営が悪化した中堅銀行向けには、支援のため、連銀は資金を貸し付けている)や、前述の連邦政府による家計支援策の一巡に加え、民間銀行が融資に慎重になっていることが大きい。

連銀の四半期調査でも、融資審査を厳格化している銀行の比率が急上昇している。これは、家計向けローンの延滞増加もあるが、リモートワークの定着によるオフィスビルの業況悪化などを受けて、商業用不動産向け融資の劣化が懸念されるため、銀行が石橋をたたいて渡る融資姿勢を強めているからだろう。

次第に広がる「景気低迷下での高インフレ」

また、経済活動規模に対しての相対的なカネ余り状態を示すマーシャルのk(M2÷名目GDP)は、このところ低下基調を強めていたが、株価はそれに逆らって少し前まで上昇していた。だが、そうした大幅な両者の乖離は近年では見たことがなく、株価が下落する形で両者の乖離が縮小に向かうのだろう。

連銀はまだ利上げする可能性を残してはいるが、大幅な利上げを続けるわけではない。しかし、同国の長期金利(10年国債利回り)は強含み状態を続けている。そうした長期金利上昇の主要因としては、同国債の格下げや国債増発など、財政要因が挙げられる。

また、長期金利上昇のきっかけとしては、サウジアラビアの自主減産延長の報道を受けて、原油の国際指標であるWTI原油先物価格が1バレル=90ドルを超えてきたことが挙げられる。

アメリカ国内でも、クリーンエネルギー政策の推進を背景とした先行き懸念から、原油産出業者が原油の産出量を抑えてきている。需要の拡大ではなく、供給の抑制によるエネルギー価格の上昇は、「景気がよくもないのにインフレが高進し金利が上がる」との懸念を膨らませかねない。

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