買われすぎの日米の株価はどこまで下落するか 日本株は割高ではないが、円安は織り込み済み

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また、NYダウが3万ドルに下落した場合、その間S&P500が同率下がったと仮定し、企業収益予想値に変化がなければ、S&P500のPERは16.1倍となり、これは通常の15~18倍の範囲内で「普通」だ。つまり、NYダウが3万ドルまで下落するという筆者の主張は、結局は「高すぎる株価が普通になる」という意味にすぎない。

米国株が調整するとしたら、その要因は?

米国株が過度の楽観に支配されたのは、いいところ取りだと述べた。しかし、最近の材料は「企業業績悪化を懸念するほど景気は悪くなりそうだし、インフレの高進とそれに伴う金利高も心配しなければならないようだ」という厳然たる事実を示し始めている。

まず景気面を述べると、雇用情勢は景気の先行きを判断するうえで重要だ。雇用動向より先に動くとされるデータ(先行指標)はいくつかあるが、その1つである週当たり労働時間は前年比で減少基調を続けており、労働力が過剰であって、先行き雇用リストラが進む可能性を示唆している。また、別の先行指標である派遣業の雇用も、昨年3月をピークとして着実に減少しており、雇用リストラが派遣から正社員に広がるリスクが懸念される。

それでも最近まで個人消費は堅調だった。この背景は、2020年のコロナ禍において、連邦政府が家計向け補助金や失業保険給付金を上乗せして家計に現金をつぎ込み、それが手元の余剰貯蓄として積み上がっていたためだ。最近では、その貯蓄を取り崩して消費に充てていたことが個人消費を支えてきた。しかし、諸調査機関の試算では、その過剰貯蓄は11月には尽きるとされている。

一部の家計では、余剰貯蓄はとっくに消えてなくなっていると推察される。だが、一度味わった「身の丈以上の消費」というぜいたくはやめにくい。そのため、借り入れ(クレジットカードの利用を含む)への依存度を高めた家計が増えているようだ。

実際、クレジットカードの延滞率(返済が予定日より30日以上遅延した比率)をみると、直近の4~6月のデータにかけて急上昇し、最近のピークを上抜けている。借り入れ依存による消費も行き詰まりつつある。

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