ミシェル・オバマが"怪物"と語る「不安な心」克服法 夫の出馬で「突然バイクで空中に放りだされた」

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みんな選挙戦を“発射(ローンチ)”させると言うけれど、いまはその理由がわかる。まさにそんなふうに感じるから――急激に加速して空中へ飛びたつ。進入車線は短くて急勾配だ。あなたとあなたの大切な人たちは発射される。突然、外に向かって、上に向かって発射されて、わざと世間をあっといわせるかたちで舞いあがり、みんなの目を引きつける。

わたしにとってこれは、まったく新次元の不確かな状況だった。そもそもわたしは、わたしの両親と祖父母のもとで育った人間で、ようするに跳んだり飛んだりするようにはできていない。はしごを一段ずつのぼっていく慎重な人間だ。典型的な山羊座の人ならみんなそうだけれど、自分がいる場所を把握してから次の行動に移りたい。

でも、動きが目まぐるしい大統領選の成層圏では、自分がいる場所がなかなかわからない。ペースはあまりにも速く、高さはめまいがするほどで、露出は大きすぎる。さらにそのクレイジーな空飛ぶバイクには、娘ふたりもひもでくくりつけて一緒に乗せていた。

不安な心はハンドルを奪ってコースを変えようとする

この時期にわたしは、いっそう深く不安な心のことがわかるようになった。何もうまくいかない――あるいはできない――と思いこんでいる、わたしのなかの情け容赦なく否定的な部分のこと。それに耳を傾けないように何度も、何度も、何度も自分に言い聞かせなければならなかった。耳を傾けたらどうなるか、はっきりわかっていたから。

怖じ気づく。信念が消える。何もできないという考えに頭が飛びついて、そこから体勢が傾きはじめる。ありえないほど、気が遠くなるほど高いその場所から地上を見おろして、自分たちが落っこちて大破する場所をはっきりと見つけ、そこへ向かって落ちていく。自分の頭のなかだけで、墜落をはじめてしまう。

これも心にとめておくべきことだ。疑念は自分のなかからやってくる。不安な心はたいていいつも、ハンドルを奪ってコースを変えようとする。

そのもっぱらの役目は、大失敗のリハーサルをし、あなたを脅かして、チャンスを手放させ、あなたの夢に石を投げつけること。あなたを不安と疑念でいっぱいにしたがる。そうすればあなたは家に閉じこもり、すっかり受け身になってソファでくつろいで、リスクをまったく冒さなくなるだろうから。

つまり自分の不安に反抗することは、たいていいつでも自分自身の一部に反抗することだ。これは解読のとても重要な一面だと思う。自分のなかにあるものを見つけ、手なずける方法を学ばなければならない。そういう不安を乗りこえる練習をしなければならない。練習すればするほどうまくなる。跳躍するたびに、次の跳躍がやさしくなる。

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