JR東日本、列車丸ごと「荷物新幹線」本格化へ始動 客を乗せない専用列車でその日のうちに輸送
一連の作業はスムーズに進み、特段のアクシデントは起きなかったようだ。ここが車両基地内であるという点を除けば、どこの倉庫や物流センターなどでも普通に見られる作業風景だが、現場スタッフに交じって、JR東日本の首脳陣も傍らで作業風景を凝視していたのが印象的だった。
今回の試みの様子は担当者にはどう映ったか。JR東日本マーケティング本部くらしづくり・地方創生部門事業推進ユニットで列車荷物輸送を担当する堤口貴子マネージャーは、「貨客混載の制約がないケースにトライできた。荷物だけに集中できたのはよかった」と述べた。また、荷物をテープでぐるぐる巻きにしたことからもわかるとおり、「当社には荷物を運ぶ専用の設備がないので、あり合わせの設備でトライしてみた。車両センターにあるフォークリフトなど、既存の機材を活用するのが今回のテーマだった」と説明した。
一方で、荷物の積み卸しや運搬などにも多くの人手がかかっているように感じられた。JR東日本でも省力化は課題の一つだが、人手を機械に置き換えるには多額の設備投資が必要になる。それに見合うだけの事業規模になるかどうかがカギとなりそうだ。
北陸から東北へ「載せ替え」も検証
JR東日本は新幹線の速達性を生かし、盛岡、新潟などから新幹線で新鮮な海産物を東京まで運ぶという試みを何度も行っている。例えば2019年6月には、盛岡駅から東京駅、新潟駅から東京駅への新幹線を使った海産物輸送の実証実験が行われた。
当初はスポット的な取り組みだったが、2021年4月からは子会社のジェイアール東日本物流の事業として格上げした。当時、JR東日本の担当者は「将来は荷物輸送専用列車の開発も視野に入れている」と話していたが、少しずつ実現に近づいているといえる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら