有休中の部下に「出社要請」、適法なのか 「強制はしていない」では済まされない

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「今回の場合、2つのポイントがあります。まず、その日に部下が休暇を取ることが『事業の正常な運営を妨げる場合』にあたるかという点と、『休暇当日になって、上司が時季変更権を行使できるか』という点です。

1つ目の『事業の正常な運営を妨げる場合』が認められるのは、有休を取った日が、その部下が所属する部署にとって、仕事上、極めて重要な日で、その部下がいないと大きな支障が出ること、そしてほかの代替要員もいないというような場合です。

今回のように、単に『仕事でトラブった、その部下がいないと困る』という程度では、およそ『事業の正常な運営を妨げる』とは認められません」

休暇の申請がギリギリだった場合は?

では、ポイントの2つ目「休暇当日に上司が時季変更権を行使できるか」についてはどうだろう。

「時季変更権は、少なくとも休暇の前日までに行使するのが原則です。しかし、部下が当日や前日など直前になって休暇を申請し、上司が代替要員を確保する時間の余裕がなかったといった場合は、会社は例外的に休暇当日の時季変更権を行使して、取得を拒否できます。

今回の事例でも、仮に、部下の年休の申請が休暇前日などギリギリになされたもので、かつ『事業の正常な運営を妨げる場合』には、上司は適法に時季変更権を行使し、出社を命じることができます。逆に、適法な時季変更権の行使と言えない場合は、出勤を命じることは当然できません」

ネットに書き込みをした上司は、「強制しているわけではないから問題ない」と言い張っているが……。

「上司と部下の関係であれば、出社しろと言われれば断りにくいものです。部下が承諾したからといって、上記のような『適法な時季変更権の行使』でなければ、損害賠償の対象となる可能性も考えられます」

大部 博之(おおべ・ひろゆき)弁護士
2006年弁護士登録。東京大学法学部卒。成城大学法学部講師。経済産業省後援ドリームゲートアドバイザー。起業支援、事業再生も含む企業法務全般から、一般民事・刑事まで広く扱う。
事務所名:小笠原六川国際総合法律事務所
 
 
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