バンコク「鉄道だけで観光できる街」への大変化 新線や延伸で利便性向上、一方長距離は不便に

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スカイトレインは従来のスクンウィット線、シーロム線に、ゴムタイヤ式のゴールドラインが加わった。スクンウィット線とシーロム線は従来も観光客にとって利用度が高かったが、スクンウィット線は北側、南側とも郊外へ延伸され、今まで行きにくかったチャオプラヤー川河口に近いサムットプラカーン地区など、新たな観光スポットへも簡単にアクセスできるようになった。

BTS サムットプラカーン
スカイトレインで南の郊外サムットプラカーン地区へも簡単にアクセスできるようになった(筆者撮影)

車両は当初ドイツ製で、増備車は中国製となったが、再びドイツ製の増備車が投入されている。ゴールドラインはまだ短区間であるが無人運転で、タイ初の全面展望が楽しめる。

バンコク・メトロはブルーラインとパープルラインの2路線があり、今年2023年6月にモノレールのイエローラインが開業した(本稿は同線開業前、2月の取材に基づいている)。

従来、ブルーラインは中心部の地下区間のみであったが、大幅に延伸され、環状ではないが大江戸線に似た「の」の字の形状の路線になった。チャオプラヤー川を2回越え、1回は地下、1回は橋で渡る。以前はバンコク観光の中心となる王宮やワット・ポーへは鉄道でアクセスできなかったが、ブルーラインの駅開業で、簡単に鉄道でアクセスできるようになった。隠れた人気スポットのサムヨードにもお洒落な駅ができ、観光地に近い駅は駅のつくりも凝ったデザインとなった。

サムヨード駅
メトロ・ブルーラインのサムヨード駅は凝った造りだ(筆者撮影)

ブルーラインは新しいバンコクの鉄道の玄関であるバンスー・グランド駅も通る。徒歩だと距離があるが、タリンチャンの水上マーケットへも最寄り駅ができ、そこからバスかタクシー利用ならほんの数分でアクセスできるようになった。それまで陸の孤島的な存在だったトンブリ駅からのタイ国鉄路線とも接続駅ができた。ブルーラインの車両はドイツ製である。

パープルラインは日本製車両が走る路線で、現在のところ郊外の地上区間のみ運行、沿線に観光地はないが、中心部へ向けて延伸工事中で、ワット・サケットのあるエリアを通るので、いずれ観光客も日本製車両を頻繁に利用することになるだろう。

バンコク都市鉄道路線図 2023年6月時点

 

日本製車両が走る「レッドライン」

コロナ禍の間に開業したのがSRTのレッドラインである。すでにSRTにはスワンナプーム国際空港へ向かうエアポート・リンクがあり、同線はSRTのいわば在来線である単線非電化の東線に沿って高架で建設されたが、レッドラインはこれと同様の建設方法で、北線と南線に沿って建設された。

レッドラインには北線に沿うダークレッドラインと南線に沿うライトレッドラインがある。ともに郊外への通勤路線であるが、ダークレッドラインはドンムアン空港(LCC=格安航空会社の専用空港)を通るので、観光客にとっての利便性も高い。

SRT ダークレッドライン
SRTのダークレッドラインはドンムアン空港へのアクセス交通も担う(筆者撮影)
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