三菱自、海外専用「トライトン」を日本で投入の真意 「三菱らしさ」構築へ、ラリーの実績もフル活用
「幅広い層に売ることは無理だと思っている。だからこそ“らしさ”を追求し、特徴を選んでもらえるようなクルマづくりをできるようにしたい」
2020年ごろの経営不振から業績が急激に上向き始めている三菱自動車。直近の2023年3月期は、純利益が1687億円と4年ぶりに最高益を更新した。成長へと舵を切ろうとしている三菱自が、いま苦心しているのがブランド力の醸成だ。
三菱自の販売台数は91万台(2023年3月期)、東南アジアでは一定の存在感を見せているものの世界シェアはわずか約1%。母国市場である日本でも約2%しかない。リコール隠しや燃費不正といった問題が2000年以降に発覚しブランドも毀損した。
加藤隆雄社長は「スズキ、ダイハツ、ホンダと三菱、同じような軽自動車が並んでいたら、どこが選ばれるか。答えは明白で、三菱はお客様にほとんど選んでもらえないだろう」と断言する。
EV(電気自動車)が普及し、ソフトウェア技術が自動車の価値を左右するようになれば、エンジンや走行性能などでの差別化は難しくなる。既存の自動車メーカーにとって大きな問題だが、経営規模で劣り、研究開発費も限られる中小メーカーにとってはより大きな危機になる。
部門横断で「三菱らしさ」を追求
そうした問題意識から、加藤社長は就任してまもなく社内に、「三菱自らしさ」を追求する会議体を立ち上げた。社長自ら参加し、企画や販売、開発といった多くの部門の社員とともに、部門を超えて議論する場として活用されているという。
三菱自がこのほど開いた技術説明会では、電動化、四輪制御、耐久信頼性、快適性という4つについて独自性を生み出せる要素技術と定義。そのうえで、“三菱自動車らしさ”をより意識した新車開発を展開していくという。
加藤社長は「パリ・ダカールラリーでチャンピオンシップを獲得した実績から、走破性や4WD技術の三菱というイメージを持つ方も多い。一方で、世界初の量産EV(電気自動車)を実現した。電動化の面でもそういったイメージそのものが三菱自動車らしさとなる」と話す。
議論を経る中で、実際に形に見えるものが出始めている。
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