Facebookが巨大ニュースメディアになる? 誰がニュースの「価値」を決めるのか

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デジタル時代になって、従来の編集者たちは自分たちが握っていた「権利」の一部を放棄するしかなくなった。今では記事をシェアするSNS利用者や、フェイスブックのアルゴリズムが編集者の役割を果たすようになっている。

フェイスブックの経営陣は、編集者としての権利を行使するつもりはない、と主張してきた。ニュースフィードの構成はアルゴリズムに任せているから、というのがその理由だ。しかし、アルゴリズムは人によって作られ、絶えず調整されており、独立した存在ではない。

ニュースがニュースでなくなる?

そこにジャーナリスティックな疑問が生じる。ニュースフィードのアルゴリズムは、部分的には、過去の閲覧者が好んだものをさらに見せるように機能している。ある調査によれば、幅広いニュースや意見に接する機会を妨げている可能性があるという。一方で、フェイスブックの研究者を含めそんなことはありえない、とする調査もある。

ミズーリ州ファーガソンで(白人警官による黒人青年射殺に対する)抗議デモが起こったとき、全米中でニュースになった。しかし、フェイスブックでは、そんなことが起こっているという気配もなかった。あるいは、女性の胸の写真を見せることが報道に携わる者として正しい判断だと編集者が考えた場合はどうだろうか。フェイスブックはひょっとしたら、それを認めないかも知れない。

フェイスブックを含むハイテク企業のアルゴリズムは変わりやすいことで有名だ。メディア企業は、フェイスブックがアルゴリズムを変更したことによって記事へのトラフィックを稼げるようになって以来、フェイスブックに深く依存するようになった。しかし、最近では、アクセス数を稼ぐための見出しをつけているとフェイスブックが判断した記事を「格下げ」するケースも見られた。そして先月、フェイスブックは媒体による投稿よりも、友達が行った投稿を優先的に掲載することを決めた。

読者もまた気が変わりやすい。「シェアホーリック」(複数のSNSに一括投稿できるサービス)の調べによると、シェアされた30万を超える媒体へのアクセスは検索エンジン経由が40%で、SNS経由は14%に過ぎなかった。しかし、これは2013年夏時点の割合。現在はSNS経由のほうが多くなっている。

フェイスブックが取り込んでくれる読者をありがたく思いながらも、メディア企業は一定のネットワークに依存しすぎたり、読者との関係を放棄したりしたくないのはそのためだ。

ハイテク企業は互いを「友人でありライバル」を呼び合うが、ニュース会社もフェイスブックを同じようにとらえている。

(執筆:Claire Cain Miller記者)

© 2015 New York Times News Service

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