Facebookが巨大ニュースメディアになる?

誰がニュースの「価値」を決めるのか

フェイスブックが始めた「Instant Articles」上のニューヨーク・タイムズの記事

ニュース媒体の記事を直接受け入れるというフェイスブックの新しい計画の問題は、ページビュー(PV)や広告収入、記事を読み込むのにどの程度時間がかかるのか、ということではない。読者との関係を「誰が」持つことになるのか、というのが問題である。

ハイテク企業はこれまでずっと、人々のデジタル世界への入り口になろうと熾烈な競争を続けてきた。デジタルの入り口は今や、人々が欲しいモノを手に入れるための唯一の入り口である。検索エンジンのグーグルがSNSを手掛け、SNSのフェイスブックが検索エンジンを始めたのはそのためだ。ショッピングサイトのアマゾンがスマホを作り、スマホメーカーのアップルがネットショッピングに進出したのも同じ理由からだ。

媒体と読者の関係が大きく変わる

今やこの傾向は新聞や雑誌などの非ハイテク企業にまで及んでいる。あるいは、すべての会社がハイテク企業になろうとしている、と言ってもいいだろう。

「Instant Articles」と呼ばれるフェイスブックの試みは、「ニューヨーク・タイムズ」を含む9つのメディア企業が提供する数本の記事からささやかに始まる。しかし、それが示唆しているのは、媒体と読者の関係における大きな変化だ。ニュースを読みたいときは、「NBCニュース」や「アトランティック」のサイトに直接行くのではなく、フェイスブックにアクセスするべきだ、とフェイスブックは促している。そして、いったんアクセスしたらそのまま留まるように、と。

すべての関係者が、この変化がすでに本格的に進んでいることを認識している。新聞の1面と雑誌の巻頭ページは、その役割をとうの昔に終えた。ウェブ媒体のトップページも同じ運命にある。メディア企業が掲載する記事、動画、写真及びグラフィックは、読者が1度につき1本ずつ、それも多くの場合SNS上で出くわす「単発記事」であることがますます多くなっている。それは、アップルのiTunesがアルバムではなく、1曲ずつ販売するようになったときと似ている。

もっとも、かつてのアルバムがそうであったように、ニュース報道はそのようには作られていない。編集者は読者にニュースを提供する際、ニュースに対する判断を行っていた。記事を互いにどう組み合わせ、どう提示するかを決める際にさまざまな要素を検討していた。ニュースに対する、ニューヨーク・タイムズの判断は、ほかの新聞や雑誌とは異なっていて、読者は長年にわたってその違いを好ましく感じてきた。

「アナログ時代には、新聞は記事の集まりとしてみなされていた」と、媒体やマーケター向けにアナリティクスを提供するシンプルリサーチの取締役エドワード・キム氏は話す。「そのようにパッケージされ、配布され、売られてきた」。

一方、「デジタルの世界では、それぞれの記事がほかの記事とはまったく関連性がなく、独立していると考えることができなければ、アナログ時代に戻されてしまう」(キム氏)。

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