iPhoneが遂げた進化とApple Watchの新機軸 「環境対策」を大きく打ち出したアップルの狙い

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レザーの使用を取りやめ、Fine Wovenというファブリック系の素材に置き換えられたケースとMagSafeウォレット。スエードやバックスキンのような触り心地は、レザーとは異なる親しみやすさがある(筆者撮影)

また、レザー素材の使用を見直し、新たな繊維素材として「Fine Woven」(ファインウーブン)に置き換えた。スエードやバックスキンのようにも感じる上質な手触りを実現した新しい素材に置き換えていくことで、より環境負荷を下げ、エシカルな製品にすることを目指している。

アップルが取り組む環境対策の狙いとは?

アップルは、オバマ政権で環境保護庁長官を務めたリサ・ジャクソンを役員に招き入れた2013年から、デザインやプロダクトが主導する企業から、環境対策のアイデアをいかに実現するかに集中して取り組む企業へと転換し、すでに10年が経過した。

この中で、アップルのオフィスやデータセンターのカーボンニュートラル化を実現し、2030年を目標にサプライヤーのカーボンニュートラルも目指している。加えて、省資源化、ユーザーが使う電力消費まで低減・カーボンニュートラル化を目指すなど、その取り組みの勢いはなくなっていない。

Apple Watch Nikeのスポーツバンドもリサイクル素材を用いており、それをアピールするため、異なる色の素材が混ざっている様子をそのままに製品化している(筆者撮影)

アップルが環境対策に力を入れている理由は2つある。1つは、アメリカの消費者の3分の2が、持続可能性のある商品やブランドへの消費を増やしたいとの意向があり、日本の消費者の3分の1も同様の傾向がある。そしてZ世代などの若い世代にその傾向が強まる。次世代の消費者に選んでもらうためにも、環境対策は必須なのだ。

加えて、本当にアップルが今のビジネスから利益を上げ続けるため、という実質的な問題もある。アップルは現在2億台以上のiPhone、6000万台を超えるiPad、2500万台に上るMacを1年間に販売している。おそらく人類が実現しているエレクトロニクス製品の最大規模の製造となる。

昨今の資源や、化石燃料によるエネルギー価格の高騰は、一般家庭でもその影響を受けるところとなった。同じ販売価格を維持するには、こうした資源高騰の影響を受けない資源サイクル、エネルギーサイクルを持たなければならない。つまり環境対策は企業活動の死活問題と言える。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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