三菱UFJ、「純益1兆円の快挙」後にはハードル 2016年3月期の純益が反落見通しの理由

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平野社長は海外への投資強化を掲げるが、短期で成果を上げるのは難しそうだ(撮影:今井康一)

決算発表と同時に公表した2015~2017年度の中期経営計画もハードルは高い。中計の基本方針は「持続的なグループの成長に向けた進化・変革」。平野社長は「国際事業は3割を超える増益を計画している。国内事業は日本経済の予想成長率プラスアルファぐらいの成長」と語り、新中計でも海外事業が成長ドライバーとなる。

「資本をどう使うかという問題では、米国そしてアジア、とりわけASEANにおける商業銀行のビジネスプラットフォームをさらに強化していく」(平野社長)と、ASEANや米国での商業銀行買収に意欲を見せる。

しかし、新興国での銀行買収はその国の産業政策とも深くかかわるので、金融規制当局や政治の理解が不可欠。数年がかりの長い視点が必要だ。米国も、金融機関の大規模合併を禁止するボルカー・ルールなどの金融規制が強化される途上にあり、大がかりなM&Aは実現しにくい情勢にある。

1000億円の自己株取得で株主に還元

こうした状況にあるためか、三菱UFJは他の2メガが行っていない自己株取得も実施する。昨年12月の1000億円に続き、今年5~7月にも上限1000億円の自己株式を取得する。多額の利益が積み上がる中、株主還元を期待する市場の声に敏感なのは評価できる。

しかし、それは裏返せば自己株取得以上に株主にメリットのある成長投資案件が目先にはないということ。アジアや米国でのM&A方針を掲げながら2000億円もの自己株取得を行うということは、当面、大型投資はないと言っているようなものだ。

はたして今後3年の中計の間に、さらなる種まきができるのか。日本最大の金融グループ、三菱UFJフィナンシャル・グループがさらなる高みをめざすためのハードルは高い。

福田 淳 東洋経済 記者

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ふくだ じゅん / Jun Fukuda

『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などを経て編集局記者。

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