オーケー銀座進出、公取調査終了で透ける「変節」 地域いちばんの安さと"お行儀"は両立できるか

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2022年2月にも、花王の製品約500品目のうち145品目の取り扱いを中止した。これは花王が商品値上げを実施したことに伴い「条件交渉も含めた弊社の商品見直しの一環」とオーケー側は説明した。

オーケーの二宮涼太郎社長は三菱商事出身(撮影:今井康一)

8月の公取委による調査報告で明らかになったのは、オーケーが約30社の納入業者に値引き分の一部などを補填させていたことだった。「公取委の組織は小さく、独自で調べることは滅多にない」(大手スーパー役員)ため、外部からの要請で動くケースが多い。オーケーの行為も納入業者による情報提供で明るみに出たとみられている。

今やオーケーは売上高5000億円超の大手流通企業となり、社長は大株主の三菱商事から受け入れている。公取委による調査が長期化し、事態が泥沼化するのは避けたいところだろう。

銀座という一等地へ出店を決めたなら、今後はなおさら“品行方正”さが求められるのかもしれない。企業が大きくなれば、求められる役割は変わってくる。行政やメーカーと戦いながら、価格を下げるゲリラ的な戦略は通用しなくなる。

値上げラッシュで問われるスーパーの価値

一方でバイイングパワーを手に入れることで「俺たちはこんなに安く売っているのに、何で買わないの?」と売り場で訴えるようになってくる。組織が大きくなるにつれ、POPで商品情報を提供すれば、客は自然と買っていくのが当たり前と考えるようになりがちだ。

町の八百屋からスーパーへ消費者は流れたことで、セルフでの買い物スタイルが定着した。店と客とのコミュニケーションが薄れる中、売り場責任者は商品や売り場を通じて対話する努力を重ねてきたと言っていい。

足元は原価高で値上げラッシュが続く中、“お買い得”を打ち出してきたスーパーの価値は薄らいできている。今のオーケーは売り場で責任者の人間性を感じられるが、今後は成長に伴う“変節”が訪れるのだろうか。

森谷 信雄 流通ジャーナリスト

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もりや のぶお / Nobuo Moriya

元日刊工業新聞編集委員。業界専門紙記者などを経て日刊工業新聞社入社。2018年に独立、流通ジャーナリスト、フリーライター、流通コンサルタントとして活動中。価格動向に関心あり、暇を見つけては店回りをしている流通好き。

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