JR東日本社長「新幹線の車内販売は当分続ける」 運賃制度やローカル線の今後までトップに直撃

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――首都圏と地方では運賃体系が少し違っていて、地方のほうが割高ですが、将来は地方の運賃はより割高になるのですか。

地方交通線は普通運賃を算出するベースとなる賃率が幹線よりもおおむね1割高いが、さらに線区によって運賃を変えていくようなことも国で検討されているようだ。一方で首都圏の運賃はもっと複雑で電車特定区間、山手線内など4種類の運賃体系がある。これをもっとシンプルにしたい。地方交通線だけではなく首都圏も含めて運賃の見直しをやっていきたい。

――ゾーン制にして私鉄も含めて一律の運賃になればさらにシンプルです。

それがいちばんわかりやすいと思うが、そうなるとゾーン内の区間で従来よりも運賃が上がるところと下がるところが出てくる。既存の運賃からいきなりゾーン制に変えるのは難しい。

災害運休路線や赤字線の状況は?

――災害で運休している津軽線や米坂線についてはどういう状況ですか。

津軽線と、運休はしていないが千葉県の久留里線については住民の方々への説明も含めて自治体との協議をやらせていただいており、これを継続していく。米坂線については復旧費用をお示ししており、協議をどう進めるか県も含めてご相談している。10月に地域交通法が施行されれば、国の新しい仕組み(再構築協議会)の具体的な運用が決まってくると思うので、そういうものを使うことも考えられる。ただ、今のところはすでに進んでいる任意の協議会の延長線上で、できるだけ速やかに結論を出していきたい。

もちろん、この3線区だけでなくほかの線区についても、今後その地域の交通のあり方についてお話しさせていただくことになると思う。

津軽線 津軽二股駅
2022年8月の大雨による被害で一部区間の不通が続いている津軽線(2021年、記者撮影)

――地方で取材をしていると、その土地のJRの現場は利用促進に向けて地域の人たちと頑張っているのがよくわかるのですが、会社全体としては赤字ローカル線を廃止しようとしているように感じてしまいます。

今後地方の人口はさらに減っていくので、鉄道以外の選択肢も視野に入れないと地域の交通が守れない。たとえば津軽線では災害の前から「わんタク」というオンデマンドの乗合タクシーを並行して走らせている。今後いろいろなパターンが出てくると思う。ただ、どんなパターンがあるにしても地元のみなさんに参加していただかないと先に進めない。只見線の場合は福島県さんがご判断されて鉄道で存続したが、鉄道を維持するには非常にコストがかかるので、そこは地域のみなさまにいっしょに考えていただきたい。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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